代理戦争化するウクライナ戦争 中国の接近・関与も顕著に

ベラルーシのルカシェンコ大統領(左)と中国の習国家主席(3月1日)|Huang Jingwen / Xinhua via AP

 ウクライナ侵攻から1年が過ぎるなか、依然として事態の打開策は一向に見えない。米国防総省のコリン・カール次官は2月末、ロシア軍が短期間のうちに支配領域を大きく拡大する可能性は極めて低いとの見解を示した。ウクライナ軍は冬が明けた春にかけて大規模な攻勢を仕掛けるとみられ、今後戦闘が激化することが予想される。ウクライナは、2014年にロシアに占領されたクリミア奪還までを想定して戦闘を継続しているが、ロシアのプーチン大統領にとってクリミアは核心的利益になっており、双方の争いの長期化は避けられない。

◆アメリカを強く意識するプーチン
 一方、侵攻から1年が過ぎ、ウクライナを取り巻く戦略環境は以前と違う様相を呈している。違う様相とは一言で言えばウクライナの代理戦争化だ。侵攻1年となる直前の2月21日、プーチン大統領はロシア国民向けに一般教書演説を行い、米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止し、アメリカの対応次第では核戦力を強化する方針を明らかにした。そして、1週間後の28日、プーチン大統領は新STARTの義務履行をロシアが一時停止すると定めた法律に署名し、即日発効された。プーチン大統領は演説でウクライナでの戦闘を継続すると強調したが、客観的にはウクライナへの軍事支援を続けるアメリカを強く意識したものになったと捉えられる。

 また、その武器供与の中身もより代理戦争化してきている。アメリカなど欧米諸国はこれまで対空ミサイル「スティンガー」や対戦車ミサイル「ジャベリン」、戦略無人機など武器や兵器を供与してきたが、今日までにアメリカやドイツ、イギリスなどは最新鋭の戦車を供与することを決定し、ウクライナに渡る戦車の総数は300を超える。そして、米国防総省は2月末、戦闘機の供与には1年半かかるとし、現時点で供与は現実的ではないとの意向を示したが、米戦闘機がロシア陸軍を攻撃するとなれば、米ロの代理戦争化はより色濃くなるだろう。

Text by 本田英寿