分断へ「戻る」世界 ウクライナ侵攻から1年、今の世界を考える

プーチン大統領(左)とバイデン大統領(2021年6月16日)|Patrick Semansky / AP Photo

 2月24日でロシアがウクライナへ侵攻してから1年となった。それまでウクライナのゼレンスキー大統領を知る人はそれほど多くなかっただろうが、今日では知らない人や見たことがない人は圧倒的少数だろう。そして、1年を迎える直前の20日、アメリカのバイデン大統領がウクライナを電撃訪問し、首都キーウでゼレンスキー大統領と会談した。訪問の目的は国内外双方への政治的アピールもあるだろうが、依然として民主主義陣営のリーダーであるアメリカの大統領が訪問したことは極めて象徴的な出来事だった。

◆分断が進む世界
 筆者はこの1年、ウクライナでの戦況以上に、世界のウクライナ戦争への向き合い方を注視しており、世界の分断がいっそう進んでいるように感じている。実際、ウクライナ侵攻後、ロシアを非難し、制裁を強化したのは欧米や日本など30ヶ国あまりに限られ、国連総会で採決されたロシア非難決議で賛成に回ったものの(もしくは棄権)、それ以上の措置は実行していない国が途上国では大半だ。昨年、東南アジア諸国連合(ASEAN)やアフリカからは「ASEANを冷戦の駒にするな」「アフリカは新たな冷戦の温床にならない」など、米中対立やウクライナ戦争など大国間対立に対する不満や警戒の声が多く聞かれた。

 また、欧米が主導してロシアへの経済制裁を強化し、マクドナルドやスターバックス、アップルなどの欧米企業が相次いで撤退するなかでも、今日ロシアではiPhone14などの欧米製品が出回っている。いわゆる並行輸入というもので、中国など欧米と取引がある国々からロシアへ欧米製品が輸出されており、欧米主導の経済制裁の大きな抜け道になっている。

Text by 本田英寿