サウジ、ロシア産燃料油の輸入量を倍増 国産原油を高値で輸出

バイデン米大統領とムハンマド皇太子(7月15日)|Bandar Aljaloud / Saudi Royal Palace via AP

◆安いロシア産を国内使用 自国産原油は輸出
 サウジアラビアとロシアのエネルギー省は輸入量の増加に関してコメントを避けたというが、エネルギー分析会社ボルテクサは、発電用燃料の季節的な需要により、6月の輸入量が増えたと述べている。サウジアラビアは電力需要を石油火力で賄っており、気温の上昇する夏に冷房需要が高まり通常ピークを迎える。よりクリーンな発電用燃料である天然ガスの利用も増えているが、ガス田から遠く離れている都市もあるという。(ロイター)

 サウジアラビアは数年前からロシアの燃料油を輸入している。国内で原油を精製する必要性が減るし、電力用に利用することで、国際市場でより高い価格で販売できる国産の未精製原油をより多く残すことができるからだ。サウジアラビアには短期的に増産する余力はほとんどないが、現在買い手が減って割引価格で販売されているロシア産原油を買うことで、自国の輸出収入を増やすことが可能だ。(同)

 石油製品アナリストのクン・ベッセルズ氏は、中東へのロシアの燃料油の流入は当分続くだろうとしている。もっとも将来的には海運保険に関連した規制により、ロシアの貨物輸送は自国の船にほぼ依存することになるため、いずれ減速すると見ている。量としてもロシアの石油製品輸出量の数分の1に過ぎず、減少した欧州分を補うには程遠いとしている。(ブルームバーグ)

◆関係に変化? アメリカ不信からロシア接近へ
 しかし今後気になるのは、サウジアラビアとロシアの関係だ。バイデン大統領は7月15日にサウジアラビアを訪問したが、石油増産などの確約を得られず手ぶらで帰国したという批判を受けている。一方、ロシアのプーチン大統領はバイデン氏訪問の1週間後にサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と電話会談を行い、OPECプラス(主要産油国が石油価格の安定を目指す枠組み)の下でのさらなる協力の重要性を確認した。米ニュースサイト『アクシオス』は、バイデン氏の訪問がロシアとの関係を損なうものではなかったことを示したいプーチン氏と、バイデン氏の意のままに操られていないことを示したい皇太子の両方にとってこの会談は有益だったとしている。

 米タイム誌は、制裁がロシア経済に打撃を与え始めても、賭けに出てくる国はあると指摘する。サウジアラビアもその一つで、石油資源の豊富なロシアとの関係を、世界のエネルギー市場に影響を与える手段と見ていると述べる。カーネギー国際平和基金のユージーン・ルーマー氏は、時間が経つにつれサウジアラビアはアメリカを「信頼できないパートナー」と見るようになり、ロシアが入り込む隙を与えることになったとしている(同)。

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Text by 山川 真智子