「ロシアスパイのICC潜入を阻止した」オランダ当局 戦争犯罪の調査内容狙いか 経歴など周到に準備

オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(2021年3月)|Peter Dejong / AP Photo

◆周到に用意された偽の人物像 住んだ都市から片思いの相手まで
 男はロシアとの関係を隠すため、巧妙な工作を行っていた。ガーディアン紙はオランダ当局の声明をもとに、「ロシア全般、とくにGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)とのつながりを隠ぺいすべく、入念に築き上げられた偽の身分を使っていた」と報じている。当局が公開した4ページにわたる資料には、チェルカソフが用意した偽の人物設定が記されている。ブラジルでの込み入った家族の歴史、住んだと主張する複数の都市の家賃、学生時代の教師への片思い、首都ブラジリアのお気に入りのナイトクラブなど、詳細な人物像が用意されていた。オランダの情報機関AVIDのエリック・アカーブーム局長はロイターに対し、「長期間・複数年にわたる、多大なる時間と労力、そして金を費やしたGRUの活動」の一環であるとの認識を示した。

 英テレグラフ紙も、詳細な偽の人生像が用意されていたと報じている。家の近所が魚臭かったため魚嫌いになったことや、幼い頃に国を離れたためブラジル訛りが少ないことなど、複数の事実の整合性を取るような巧妙なストーリーが用意されていた。

◆ジョンズ・ホプキンス大にも留学か
 このスパイのSNSのプロフィールは、ICCのインターンシップを獲得する前段階として、欧米のエリート校で学んでいたと主張している。ワシントン・ポスト紙は「未来の外交エリートたちにとって重要な学府」である、ジョンズ・ホプキンス大学・高等国際問題研究大学院などで学んでいたと報じている。

 ガーディアン紙は実際に大学の記録を調査したうえで、少なくとも2020年にアメリカの大学を卒業していることが確認できたとしている。ロシアスパイは経歴を偽り、数年を費やして海外の大学で学ぶという手の込んだ工作を踏んで、国際的な情報源への接触を試みているようだ。

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Text by 青葉やまと