「ロシアスパイのICC潜入を阻止した」オランダ当局 戦争犯罪の調査内容狙いか 経歴など周到に準備

オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(2021年3月)|Peter Dejong / AP Photo

 オランダの捜査当局は6月16日、国際刑事裁判所(ICC)に潜入する目的で同国入りを試みたロシア諜報局職員を入国拒否したと発表した。このスパイはブラジル人の身分を偽ってICCのインターンシップを獲得しており、潜入に成功すれば重要な機密データへのアクセスを許す恐れがあった。

◆ブラジル人を名乗る偽名の男
 男はスパイ活動の一環としてブラジルからICCへの潜入を試みたとみられる。男はヴィクター・ミュラー・フェレイラという33歳のブラジル人を名乗ったが、その正体はセルゲイ・ウラジミロビッチ・チェルカソフという36歳のロシア人諜報員であった。米ワシントン・ポスト紙(6月16日)はオランダ側による公表を受け、「驚きの発表」だと報じている。事件は今年4月に発生し、6月16日になってオランダ当局が発表した。当局によると男はすでにブラジルに送還されている。

 ICCは現在、ロシアのウクライナ侵攻に関し、戦争犯罪の調査をしている。オランダ当局は、男がICCによる調査内容の入手を図ったと考えている。英ガーディアン紙(6月16日)は、「チェルカソフが成功していたならば、(国際刑事)裁判所の電子メールシステムにアクセスし、提出された(戦争犯罪の)証拠をコピー・改ざん・破棄することが可能だった恐れがある」と述べ、重大なリスクがあったと指摘した。

Text by 青葉やまと