クアッドから見えるインドの思惑 日米豪との共通点と相違点

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 日本、米国、オーストラリア、インドの4ヶ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会合が24日、首相官邸で開催された。首脳会談の成果として、4ヶ国は自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、今後5年間で6兆円規模のインフラ支援・投資を途上国に実施する方針を明らかにした。また、ウクライナ情勢については、「ウクライナでの悲劇的な紛争」と表現し、主権や領土一体性の尊重、平和的解決の重要性を強調するにとどめ、ロシアを名指しで非難することはなかった。今回のクアッド首脳会合からはどんなことが読み取れるだろうか。そのポイントはインドである。

◆日米豪とインドの共通点:対中国
 日米と中国の対立事情は周知の事実だが、オーストラリアとインドも中国との関係は冷え込んでいる。オーストラリアで新たに発足したアルバニージー新政権で副首相を務めるマールズ氏は24日、オーストラリアと中国の関係は引き続き難しいものになるとの認識を示した。両国関係は近年、新型コロナウイルス起源の真相解明や人権問題、中国によるオーストラリア産の牛肉やワインなどの輸入制限によって悪化している。クアッド直前に、オーストラリア野党・労働党が与党・保守連合に総選挙で勝利して政権交代となったが、米国と同じように中国への警戒心は党を問わず共有されているとみられ、今後も冷え込んだ関係が続く可能性が高い。

 そして、インドと中国は長年国境問題を抱えているが、近年は国境地帯での衝突でインド兵に犠牲者が出るだけでなく、中国がスリランカやパキスタン、バングラデシュやネパールなどインド周辺国に対して多額の経済支援を行うなどしてインドを囲むように影響力を強めており(真珠の首飾り戦略)、インドの中国への警戒心は年々高まっている。インドとしてもクアッドに関与することで中国をけん制する独自の狙いもあることだろう。

Text by 和田大樹