NATOに接近する北欧、ロシアの対抗手段は? 日本もNATO接近

フィンランドのマリン首相(左)とニーニスト大統領(ヘルシンキ、5月十五日)|Heikki Saukkomaa / Lehtiuva via AP

◆ロシアはどのような対抗手段に出るか
 これによって懸念されるのがロシアの対応だ。フィンランドとスウェーデンのNATO加盟について、すでにロシア側は強く反発しており、強い対抗手段に出る可能性もちらつかせている。プーチン大統領はこれまでNATOの東方拡大に強く反発してきたが、仮にフィンランドが加盟すれば、NATO圏とロシアが接する国境が1300キロも増えることになり、ロシアにとっては軍事的脅威が大幅に増すことになる。

 しかし、ロシアとしても強硬な手段を取ることは難しいだろう。ウクライナ情勢で昨今ロシア軍の劣勢も顕著になっており、プーチン大統領としてもこれ以上負担を増やせば自らの首を絞める結果になる可能性もある。できるのは言葉による威嚇のみだろう。

◆日本によるNATO接近
 一方、最近の報道によると、岸田首相は6月下旬にスペイン・マドリードで開催予定のNATO首脳会合に出席する方向で調整が進んでいるという。その直前にはドイツでG7サミットが開催されるので、そのままスペインへ駆け込む形になる。日本は対ロシアで欧米と完全に足並みを揃えているが、北大西洋の安全保障とインド太平洋の安全保障は別物ではなくむしろ多くの接点があることを強調する狙いがあるのだろう。

 また、日本がNATOに加盟することはないだろうが、日本周辺の安全保障環境がいっそう厳しくなるなか、日本としては価値観を共有する諸外国になるべく多く接近し、そういった国々をインド太平洋に関与、接近させたい狙いもあるだろう。フィンランドとスウェーデン、そして日本の昨今の動きには深い共通性がある。

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Text by 和田大樹