韓国がクアッド参加なら… 政権交代、アジアの安全保障への影響は

米軍基地キャンプ・ハンフリーズを訪問したユン・ソギョル次期大統領(3月7日)|UNC - CFC - USFK / flickr

 アジアの安全保障環境をめぐって韓国が大きく動きそうだ。3月9日に実施された韓国大統領選挙の結果、保守野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソンニョル)候補が与党「共に民主党」のイ・ジェミョン候補との大接戦を制して当選し、5月には尹新政権が発足することになった。今後明らかになることも多いだろうが、尹氏は米国や日本との関係を重視し、対北朝鮮では厳しい姿勢を取るとみられる。最近、尹新政権で外相候補に指名されたパク・チン氏も、慰安婦問題をめぐる7年前の日韓合意について公式な合意だの意見を示しており、今後の韓国の動きはアジアの安全保障環境に変化を加える可能性が高い。

◆韓国はクアッドに加わるか
 バイデン政権は中国を唯一の競争相手と位置づけ、そのために日米豪印によるクアッドの強化に努めている。5月下旬には日本でクアッド首脳会合が開催される予定だが、バイデン大統領も同会合への参加に強い意欲を示している。最近、ウクライナ情勢とロシアへの対応をめぐり、米国はロシアを強く批判しないインドに不満を示しているが、今後は韓国の尹政権がクアッドに接近、参加するのかがポイントになる。クアッドは自由で開かれたインド太平洋構想の要だが、尹政権はすでに首脳会合へのオブザーバー出席を非公式に打診したとみられ、仮に加わることになれば各国からどのような反応が見られるのだろうか。

◆北朝鮮とクアッドの接近
 バイデン政権にとってのクアッドは中国への対抗手段の一つであり、クアッドをめぐる議論のなかで北朝鮮は存在感が薄かったと言える。しかし、韓国が正式に加わることになれば(段階的な参加になると思われるが)、北朝鮮はクアッドを身近な敵対的な動きと捉えるようになるだろう。韓国のクアッド加入自体が北朝鮮の行動をエスカレートさせるトリガーにはならないだろうが、北朝鮮がそれを良く思わないことは間違いない。

Text by 和田大樹