欧米VSロシアのなか、中国は南太平洋でプレゼンス強化 ソロモン諸島と安保協定

ソロモン諸島のマナセ・ソガバレ首相と中国の李克強(2019年10月9日)|Thomas Peter / Pool Photo via AP

◆南太平洋をめぐる大国間競争
 おそらく今回の安全保障協定は、中国にとって経済だけでなく政治・安全保障面からの影響力拡大に向けて一つのステップになったことだろう。中国が南太平洋に接近する理由には、台湾と国交を有する国に中国との国交樹立に変更させ、台湾に外交をできなくさせることや、西太平洋での軍事プレゼンスを強化することなどがあるだろうが、中国のこういった動きに対して米国やオーストラリアは警戒感を強めている。

 とくに、近年中国との関係が冷え込むオーストラリアは南太平洋を自らの裏庭と位置づけており、今回の安全保障協定締結に危機感を募らせている。オーストラリアのモリソン首相はこの地域の安全保障への圧力と脅威であると危機感を露わにし、ニュージーランドなどと対応を協議していく姿勢を示した。

 米国のバイデン政権は、日本、インド、オーストラリアとのクアッドや、昨年オーストラリアと英国と創設した安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」などを通じて中国の海洋覇権に対抗していく姿勢を鮮明にしているが、中国としては南太平洋でプレゼンスを強化することでクアッドやオーカスに対抗する狙いがあると思われる。今後も南太平洋をめぐる大国間の競争が続くことだろう。

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Text by 和田大樹