ウクライナ情勢:米国バイデン政権の限界が顕著に 加速するGゼロ

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◆Gゼロの時代
 米国には地政学を専門に扱うコンサルティング会社「ユーラシアグループ」というものがあるが、同社の社長である国際政治学者イアン・ブレマーは以前から「Gゼロの世界」を提唱してきた。Gゼロの世界とは、簡単に言えばグローバルリーダシップを発揮できる指導者がいない世界ということで、米国の力が相対的に弱くなり、中国が影響力を高め、ロシアが拡張主義的行動をエスカレートさせる今日の世界は、まさにGゼロの世界に当たるだろう。

◆不安定化する世界
 今後の世界は現在より不安定化する可能性が高い。今回のウクライナ問題では、中国はその行方を第三者の立場で静かに注視し、欧米の死角や政治的隙を探っている。今後ロシアやイラン、北朝鮮など安全保障上懸念される国々は米国の反応をこれまでほど窺わなくなり、自主的な行動をさらにエスカレートさせる可能性がある。

 また、米国や日本、オーストラリア、欧州などは今後も対中国、対ロシアで協力することがあるだろうが、第三世界の国々がそれにどこまで付いてくるかがポイントとなる。21世紀に入り中国は着実に力をつけ、一帯一路などによって周辺地域やアフリカ、中南米諸国などとの経済関係を強化しており、すでに第三世界の国々にとって欧米陣営に付いていけば安心という国際関係ではない。今日ウクライナ情勢はGゼロの世界を加速させるプロローグでしかないのかもしれない。

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Text by 和田大樹