中国はウクライナ情勢をどう見るか

Natacha Pisarenko / AP Photo

◆中国はウクライナ情勢をどう見るか
 では上記の声のように、仮にロシアがウクライナ侵攻に踏み切り、そこでバイデン政権への批判が内外から上がるようなシナリオになれば、中国は台湾情勢や南シナ海でより強硬な姿勢を取ってくるのだろうか。

 まず、そうなれば政治的な隙が新たに生じることになるだろう。つまり、米国と対峙する中国にとって、インド太平洋において米国の対応能力を改めて探る機会となる。米国が本土から遠方にある問題(今回はウクライナ)で十分な役割を示すことができなかったとすれば、習政権にとってそれはインド太平洋に援用して軍事、安全保障戦略を検討する機会となるだろう。

 とはいえ、それによって中国がすぐに強硬姿勢をエスカレートさせるわけではないだろう。当然ながらウクライナと台湾・南シナ海は距離的に遠く離れており、近隣を含めた米軍のプレゼンスで比較しても多くの差がある。また、バイデン政権は中国とロシアとの大国間競争に対抗していく姿勢を示しているが、どちらにどれほど強い姿勢で臨むかにも差があると考えられ、バイデン政権がウクライナで弱腰だったからといって、中国がインド太平洋で米国に優位に立てることにはならない。

 一方、中国はロシアと自らの国益と利害が一致する範囲で、対米国でプーチン政権との共闘を重視することは間違いない。中央アジアをめぐる影響力拡大、北極政策など両国には必ずしも利害が一致しない項目もあり、どれほど中露共闘が深まるかも今後は不透明だが、ウクライナ問題での米国の姿勢、実際の対応能力を注視・分析し、習政権はあらゆる策を練って対米政策を打ち出してくることだろう。その意味でロシア関係は習政権にとって極めて重要なトピックと言えよう。中国とロシアと領土問題を抱える日本としても、今後の中露関係の行方を注視していく必要があるだろう。

【関連記事】
中国の極超音速兵器、アメリカが衝撃を受けている理由 「スプートニク・ショック」の再来とも
1991年ソ連崩壊の衝撃、中国共産党がそこから学んだもの
「新冷戦」の幕開け告げる、ロシア・中国の軍事演習「ボストーク18」 過去最大規模

Text by 和田大樹