混乱極める2022年:先鋭化する大国の対立、その陰で肥大化するリスク

クリミア半島を移動するロシア軍の装甲車両(1月18日)|AP Photo

 今年も世界情勢は混乱を極めそうな状況だ。米中対立が英国やオーストラリアなどほかの欧米諸国を巻き込む形で拡大するなか、北朝鮮は今年になってミサイル発射を繰り返し、ロシアはウクライナへの侵攻をちらつかせている。大国間の対立は昨年以上に先鋭化しそうな状況だ。一方、国家間問題だけでなく非国家アクターをめぐる状況も深刻だ。イエメンのフーシ派はUAEへのミサイル、ドローン攻撃を実施し、アフガニスタンやイラク、シリアではジハード組織の再生が懸念される。

◆米国の影響力衰退を探る中国、ロシア
 オバマ政権以降、トランプもバイデンも米国は「世界の警察官」をやめると表明してきた。米軍のアフガニスタンからの撤退などに象徴されるように、それはもう戻らない事実だ。その傾向は今後も進むことになるだろう。そのようななか、米国のアジアやアフリカでの影響力衰退をじっくり眺めるように、中国やロシアはその政治的空白を埋めるかのような行動を示し、覇権的な行動を強化している。昨今のロシアによるウクライナへの侵攻を示唆する行動、中国による台湾への侵攻を匂わせる戦闘機の防空識別圏への進入など、大国間の覇権的な競争がエスカレートしている。

◆単独的な行動を繰り返す北朝鮮
 そして、大国間をめぐる競争が激しくなるなか、北朝鮮は単独的な行動を繰り返している。バイデン政権になって以降、米国と北朝鮮の関係は1年以上動かない事態が続いている。北朝鮮としてはこれまでと同じように、ミサイル発射などで米国の関心を集め、米国からの歩み寄りを望んでいるのだろうが、バイデン政権にとっての北朝鮮政策の優先順位は決して高くない。米国が中国やロシアに翻弄されることで北朝鮮に割ける時間が減ることで、北朝鮮側の行動がさらにエスカレートする可能性もある。

Text by 和田大樹