豪が原潜建造へ、英米が協力 契約破棄された仏が不満表明

米海軍のバージニア級原潜の13番艦イリノイ(9月13日)|Mass Communication Specialist 1st Class Michael B. Zingaro / U.S. Navy via AP

◆怒り沸騰、追い出されたフランス
 この発表に不満なのが、2016年に総額400億ドル(約4.4兆円)で新型潜水艦建造をすでにオーストラリアから受注していたフランスだ。米英豪の原潜建造計画は、フランスにとってオーストラリアとの契約破棄を意味する。さらに、欧州の同盟国でありパートナーである自国が、アメリカによってオーストラリアとのパートナーシップから追い出されたという気持ちも強く、仏外相と仏国防相が失望の意を表明した。(NPR)

 フランスの外交官、ジェラール・アラウド氏に至っては怒りを隠せない。フランスは原潜を売ることもできるのだから、この米英豪の協定は核戦力とは無関係で、単にオーストラリアが「魅力的な契約」を確保しようとしているのだと語った。さらに「フランスは後ろから英米に刺されたことで、『世界はジャングル(のような過酷な生存競争の場)』だということを思い知らされた」「フランスを犠牲にして、米英豪は取引を行った」と述べている。(オーストラリアン紙

◆豪もお疲れ? 山あり谷ありだった仏との協業
 フランスの怒りを収めようと、モリソン首相は「フランスは依然として太平洋地域における非常に重要なパートナーだとし、今回は残念な決定だが、それを乗り越えて互いに協力していけることを望むと発言した。(同上)

 振り返ればフランスとのプロジェクトは、遅延、コスト増大で難航。豪国家監査院からは、既成の潜水艦を購入するのではなく、「フランスが設計し国内建造」というアプローチを追及したことでリスクが高まったとの指摘もあった(ガーディアン紙)。オーストラリアン紙は、2035年以降という納期が、中国との緊張を考えれば遅すぎたという防衛専門家の意見を紹介している。何かと問題続きだったプロジェクトだけに、英米の参入がどういう結果をもたらすのか、今後も注目していきたい。

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Text by 山川 真智子