パキスタンがタリバンを支持する事情 膨らむ国内の脅威

国境を守るパキスタン民兵(右)とタリバン兵士(左)(8月21日)|Muhammad Sajjad / AP Photo

◆二股明白、それでも米軍は切れず
 パキスタンは9.11以降のアメリカのアフガニスタン侵攻を支援することを約束し、イスラム教反政府勢力への支援を繰り返し否定してきた。しかし、NATOの侵攻後、表向きはタリバンに背を向けたが、軍やISIの幹部はタリバンへの支援を続けていたことが確認されている。

 多くのアナリストやジャーナリストの間では、タリバンの背後にパキスタン、とくにISIがいることは自明の事実だった。二つの顔を持つパキスタンには国際組織からも疑惑の目が向けられ、資金洗浄やテロ資金供与への対策を目的とする金融活動作業部会(FATF)などでも問題視された。なぜ疑惑があるのに、パキスタンがアメリカから制裁を受けないのかという疑問も出ていたという。(フランス24

 実は米政府内では、アフガニスタンに物資を輸送するためにパキスタン領へのアクセスが必要だったこと、多数のジハーディスト集団を抱えるパキスタンのような核保有国を阻害し不安定化させることのコストは計り知れないことが懸念されていた。(同)

 シンクタンクのカーネギー国際平和基金のサイトに寄稿した研究者のアキール・シャー氏は、米軍はアフガニスタンに展開している兵士の支援やテロ対策能力維持のため、パキスタンの空域や基地を利用せざるを得ないと指摘。よってパキスタンの指導者たちは、アメリカに対し継続的な影響力を持っていると分析する。また、米軍が撤退し、アフガニスタンへの協調した国際的アプローチがないなら、パキスタンがタリバンへの支援を続けても重い代償を払うことはないというのが、パキスタンの見方だとしている。

◆負の影響も 「パキスタンのタリバン」台頭か?
 もっとも、タリバンの台頭によりパキスタンが失うものは大きいという見方もある。冷戦時代からパキスタンは300万人のアフガン難民を受け入れており、新たな流入が懸念される(フィナンシャル・タイムズ)。

 さらに国内テロの復活も予想される。パキスタンとその周辺にはジハーディスト集団が活動しており、とくにパキスタンの国家を狙い、軍に対するジハードを目的の一つとする「パキスタンのタリバン(TTPと略す。アフガニスタンのタリバンと協力関係があったが別組織)」は安全保障上の脅威だ。インディアン・エクスプレス紙によれば、2007年から2014年にかけて、TTPはパキスタン全土でテロ攻撃を行い、流血と破壊をもたらした。米軍の支援を受けたパキスタン軍により弱体化したが、近年活動が活発化しており、アフガニスタンのタリバン支配に触発されさらに拍車がかかるという見方もある。

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Text by 山川 真智子