邦人医師殺害、誰の犯行なのか? アフガニスタンは覇権争いの最前線と化す可能性

Rahmat Gul / AP Photo

 パキスタンとの国境にも近いアフガニスタン東部のジャララバードで4日、現地で医療支援活動に従事していた邦人医師が武装勢力に銃殺された。同じ車両に乗っていたほかの5人も殺害されたが、地元の治安当局は同医師を狙った計画的犯行との見方を示している。現地は日本外務省も危険レベル4とするきわめて治安が悪い場所である。ボランディア・支援活動であっても、それを良く思わない、もしくはそれを政治的に利用しようとする勢力がいることが改めて浮き彫りとなった。

◆誰が実行したのか
 一体、誰が実行したのだろうか。現在も犯行声明などは出ておらず、詳しいことは分かっていない。反政府勢力タリバンは、「中村医師はわが国の建設に携わっており、タリバンと良好な関係を築いている。われわれの戦闘員の標的ではない」と犯行を否定する声明を出している。

 だが、タリバンのなかでは長年権力闘争や内紛が生じており、米国と和平交渉を進めるタリバン穏健派と、それに真っ向から対立する強硬派も多く存在する。そして、その強硬派の一部はタリバンから離反し、2015年あたりからアフガニスタンで勢力を拡大した「イスラム国のホラサン州(ISK)」と呼ばれる組織に加入した。

 また、フランス人やインド人など外国人戦闘員もISKに流れ込んでいるとされ、政府や軍・警察、外国人部隊、またハザラ族など少数派のシーア派教徒を狙ったテロ攻撃を繰り返している。現在のところ、イスラム国系メディアは同事件で声明は出していないが、ISKのメンバーが実行した可能性は排除できない。

 一方、現地では、ハッカーニ・ネットワークやアルカイダなどほかのイスラム過激勢力も活動しており、こういった組織が関わった可能性もある。ちなみに、米軍は今年2月、依然として200人規模のアルカイダ戦闘員が首都カブールをはじめ、東部や南部で活動していると指摘している。

Text by 和田大樹