邦人医師殺害、誰の犯行なのか? アフガニスタンは覇権争いの最前線と化す可能性

Rahmat Gul / AP Photo

◆米中覇権で揺らぐアフガニスタン
 アフガニスタンというと、9.11以降、米国の対テロ戦争の最前線である。現在、トランプ政権はタリバンとの和平交渉を進めているが、ロードマップは思うようにはいっていない。トランプ政権は、米軍が撤退した場合、アフガニスタンが再びテロの温床になることを警戒しており、タリバン強硬派やISK、国際テロ組織アルカイダの行方を注視している。

 だが、米国のアフガニスタン政策にはもう一つの大きな側面がある。それは中国の存在だ。ほぼ知られていないが、実はアフガニスタンと中国は約75キロと短いながらも国境を接している。中国が展開する一帯一路のなかで、アフガニスタンは陸のシルクロード上重要な場所にあり、中国が経済的関係を強化するイランやパキスタンとも国境を接している。中国にとって、アフガニスタンを影響下に置くメリットは大きい。

 そして、北京にとってアフガニスタンの軍・警察を支援する意義は大きい。実は、新疆ウイグル自治区のイスラム過激派は長年、アフガニスタンやパキスタンを拠点とするイスラム過激派と繋がりがあることが指摘されている。よって、そのようなイスラム過激派を弱体化させることは、北京にとって対ウイグル政策にもなる。北京にとって、ウイグル問題と絡ませてアフガニスタンへ関与する政治的メリットは大きいはずだ。

 対テロ戦争の最前線であるアフガニスタンではあるが、今後は米中覇権の最前線としての色が濃くなるかもしれない。

Text by 和田大樹