中身は別物? スロバキアに届いたロシア製ワクチン「スプートニクV」

Zoltan Balogh / MTI via AP

 とはいえ、ドイツやルクセンブルクもEUの承認を前提にロシアとの契約に向けて動く意思を示したり、イタリア北部での7月からの生産開始が決まったり、ヨーロッパ諸国が同ワクチンに寄せる期待も大きい。

◆スロバキアへは安全性の不確かなワクチンが届く
 そんな機運に冷水を浴びせたのが、4月8日のスロバキアの国立医薬品管理研究所(SUKL)の発表だ。「スロバキアが受け取ったワクチンと、ランセット誌に発表された(中略)研究で用いられたワクチンは、特質・特性が同じではない」というのだ。SUKLはまた、「ラボラトリーでのテストだけでは、スロバキアに送られたロットの、ヒトへの有効性と安全性を保証できない」と述べ、輸入したワクチンの成分データを送るようにワクチン製造業者に再三要求したにもかかわらず応じてもらえなかった、と明かしている。(20 minutes、4/8)

◆EUのロシア不信の行方は?
 EUがもともとスプートニクVに懐疑的であるのは、同ワクチンの開発が超特急で、いくつかの段階を飛ばしたものであることや、内容が不透明であることが理由だった。それらの疑いはランセット誌発表の研究で払拭されたかに見えたが、今回のスロバキアの発表はEUの懐疑心を再燃させるのに十分な内容だ。

 承認された場合、スプートニクVはEUにとってヨーロッパ外で生産される最初のワクチンとなるため、ヨーロッパ医薬品庁(EMA)は、スプートニクVの生産現場の検査が必要だと前々から発言していた。その言葉通り、調査のためEMAの専門家らがモスクワ入りしたのは4月10日のことだ。この調査結果はEUのロシア不信を打ち消すことができるだろうか。

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Text by 冠ゆき