富裕国のワクチン独占「ワクチン・ナショナリズム」にどう対峙するか

「COVAXファシリティー」を通じてコソボに配布されたワクチン(3月28日)|AP Photo

◆アフリカにおけるオルタナティブな選択肢
 ニューヨークタイムズのコロナワクチントラッカーによると、米時間28日時点での100人あたりのワクチン接種状況を大陸別にみると、米国が26回、欧州が15回、南米が7.9回、アジアが4.9回、オセアニア1.3回、アフリカ0.7回となっており、欧米とアフリカ大陸のワクチン接種状況に大きく差がある。同データを国別にみると、セーシェルが100回と飛び抜けており、続くのがモロッコの21回、ルワンダ2.8回、セネガル1.4回、南アフリカ0.4回という数値だ(ちなみに日本は0.7回)。

 ワクチン・ナショナリズムと不公平な分配を是正するためのCovaxは、WHO、GAVIアライアンス(GAVI, the Vaccine Alliance)、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)が主導する、ワクチンの共同購入および分配の枠組みである。中低所得国がCovaxを通じてワクチンを入手する方法は2種類あり、自ら資金を拠出して購買を行うケースと、ドナーからの拠出金によってワクチン供給をうけるというケース(Gavi COVAX AMC(Advance Market Commitment))がある。中低所得国が中心であるアフリカにおいては、ガボン、リビア、南アフリカのみが自ら資金を拠出し、他国はCovax AMCのスキームに依存。「援助に依存する大陸としてのアフリカ」があらためて裏付けられた事実であるとデイリー・マーヴェリックは指摘する。3月22日時点で少なくともアフリカ28ヶ国がCovaxを通じてワクチンを受け取っている。アフリカ疾病管理予防センター(Africa Centres for Disease Control and Prevention:Africa CDC)によると、3月中旬時点でアフリカに到着したワクチンの9割以上がCovaxを通じたものだ。ガーナやルワンダなどは接種が進み、すでに7-8割のワクチンを消費した(BBC)。

 Covax経由のワクチンはアストラゼネカ製が主流のようだが、中国やロシア製のワクチンの供給もある。中国の動きを「ワクチン外交」だとして警戒する議論もあるが、中国はアフリカ各国にとっての主要経済パートナーであり、中国のアフリカ各国へのワクチン提供は当然の流れでもある。欧米の影響力や寄付が相対的に減少するなか、経済面だけでなく人道面においても中国の存在感はますます強化されているようだ(ティプロマット)。一方で、中国によるワクチンの世界展開の状況をみると、近隣アジア諸国や南米が多く、中国側からみるとアフリカだけに焦点をあてているという様子でもないようだ。

 長期的にアフリカ各国が他国に依存しすぎる状況から脱するためには、自国での生産やアフリカ地域内での生産・流通インフラの確保が必要だ。今月、世界貿易機関(WTO)の会合にて南アフリカとインドらは、先進国企業が保持するワクチンや治療薬の特許権の除外を求める提案を行ったが、合意には至らなかった。自国での生産が可能になれば、価格の低下が期待できるだけでなく、自国の経済への貢献にもつながる。一方で、特許権の除外が必ずしもすぐにアフリカへのワクチンの供給拡大につながるということでもなさそうだ。WHOによると、現在ワクチン生産が可能な場所は、エジプト、モロッコ、セネガル、南アフリカ、チュニジアの5ヶ国のみに限られており、その数も10以下であるとのことである。南アフリカの一社は、ジョンソン・エンド・ジョンソンと契約を締結し、国内生産が開始される。また、エジプトも数社との契約締結を進めている。さらなる生産拡大には、中国を含め、海外製薬会社の今後のアフリカへの投資拡大が期待されるところである。

 ウィルスは、誰しもがその影響を受ける可能性はあるものの、究極的にはイコライザー(equalizer)ではなかったが、いまこそナショナリズムではなく、マルチ・ラテラルな連携の重要性が再認識されるべきである。

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Text by MAKI NAKATA