「戦争準備に集中せよ」習近平の発言はさらにエスカレートするか

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 インドを中心に日本や米国が参加する合同海上軍事演習「マラバール」が3日から開催される。3日から6日にかけてベンガル湾、17日から20日にかけてアラビア海で実施される予定で、今回のマラバールには2007年以来はじめてオーストラリアが参加する。これまでインドは中国への配慮からオーストラリアの参加打診を拒否してきたが、印中国境での衝突などで中国への態度を硬化させている。インドが安全保障的にここまで対米接近の態度を顕著に示すことはなかった。これに対して中国はどう反応するのだろうか。最近の習近平氏の発言を聞いていると、「もう中米対立は避けられない」「我が道をこれまで以上に進む」というような態度が見え隠れする。

◆「戦争への備えに集中」最近の習近平発言
 たとえば、習近平氏は9月3日、第二次世界大戦の終結75周年を記念する式典の席で、「中国の復興は共産党政権によってのみもたらされる」「共産党政権の存在を脅かす勢力や個人は決して容認しない」との姿勢を示した。中国共産党政権は防衛以上に国内の治安維持に多くの予算を費やすとも言われ、長年新疆ウイグル、チベット、内モンゴルなどの不満分子の動向を懸念していることから、この発言は決して目新しいものではない。

 しかし、10月以降の発言は気になる。習近平氏は同月14日、香港に近い深セン市の経済特区設立40周年を祝う式典に出席し、中国本土と香港・マカオとの経済一体化を強化する方針を発表した。式典には香港の林鄭月娥行政長官やマカオの賀一誠行政長官らも参加し、習近平氏は広東省と香港・マカオを合わせた経済圏構想「グレーターベイエリア」の建設に強い意欲を示し、香港・マカオの人々に対して中国への祖国心を高めるよう求めた。また、その前日、習近平氏は広東省東部にある潮州市に駐屯する海軍陸戦隊基地を訪ね、「全身全霊で戦争への備えに集中しろ、警戒態勢を維持せよ」「軍は党に対して絶対的な忠誠を堅持する必要がある」などと軍を鼓舞する姿勢を示した。

Text by 和田大樹