激化する米中対立、どのような世界をもたらすのか?

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 米中対立の悪化に歯止めがかからない。今年初めからの新型コロナウイルスの感染拡大は、「感染源国」中国と「最大被害国」米国との対立をさらに悪化させる主要因となった。これまで米中対立は貿易戦争として繰り広げられてきたが、いまでは外交の領域にまで影響を及ぼすようになっている。米中対立の悪化は今後どんなシナリオを誘発するのか。

◆米中対立は外交領域に食い込む
 中国政府は27日、四川省成都にある米国領事館を閉鎖したと発表した。27日現在、中国政府の担当者らが総領事館内に立ち入り、撤収状況を確認しているとみられる。米国のポンペオ国務長官は21日、スパイ行為や知的財産権侵害の拠点になっているとして、南部テキサス州ヒューストンの中国領事館の閉鎖を要求し、ホワイトハウスは24日までに同領事館の閉鎖を発表した。
 
◆どのような安全保障上のシナリオを誘発するのか?
 まず、現在の米中対立悪化は全面戦争に繋がるのだろうか。全面戦争というと昔の戦争のような状態を想像するかも知れないが、その可能性はきわめて低い。経済のグローバル化と深化によって米中も経済的には相互依存関係にあり、全面戦争となると双方にとって自爆行為となる。また、現状では中国の軍事力は米国のそれにはるかに及ばず、過剰な被害は双方とも避けたいはずだ。

Text by 和田大樹