新型コロナウイルスは米中対立を激化させるか?

Patrick Semansky / AP Photo

◆新型コロナは米中対立を激化させるか
 だが、習近平政権のしたたかな姿勢が成功するとは限らない。感染の急速な拡大が新たな米中対立に繋がることが懸念されている。

 トランプ大統領は19日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う中国の初動体制を強く非難し、ホワイトハウスでの声明文書のなかで、「コロナウイルス」と書かれた箇所を「中国ウイルス」と自身で書き直していたという。

 今月に入って、米国でも感染者数が増え続けており、経済への打撃が懸念され、秋に予定されている大統領選への影響も指摘され始めている。トランプ大統領は、これまで好調だった経済を今後の選挙戦でアピールしていきたいことから、その衰退は再選において明らかなマイナスとなる。

 一方、民主党予備選では中道のバイデン氏が本命になる見通しが強まっており、今後、感染拡大に伴うトランプ政権の危機管理能力問題や経済への影響などを取り上げ、攻勢を強めていくことが予想される。トランプ大統領は、中国への批判を強めることで責任をできるだけ回避したい狙いもあり、貿易摩擦などで両国間の対立が深まる可能性もある。

 これが米国経済に影響を与えれば与えるほど、トランプ大統領は中国への批判を強め、習近平政権の「支援国」政策は上手くいかないことだろう。新型コロナウイルスの問題は、すでに米大統領選、米中関係の行方にも直接的な影響を与える領域に入っている。

Text by 和田大樹