中国をけん制、激しくなるインド洋の覇権争い モディ首相の初外遊の意味

Eranga Jayawardena / AP Photo

 南太平洋をめぐる海域で、オーストラリアやフランスの中国への懸念が高まりつつあるが、それは安倍首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」のもう片方となるインド洋でも同じような動きが見られる。それはどのような動きなのか。

◆初の外遊先としてのモルディブとスリランカの意味
 今年4月から5月にかけて実施されたインド総選挙で圧勝したモディ首相は、
第2次政権初の外遊先としてインド洋のモルディブとスリランカを訪れた。モディ首相は6月8日、モルディブで昨年11月に「脱中国」を掲げて就任したソリ大統領と会談し、経済や安全保障分野で二国間協力を緊密化させていくことで一致した。両者は昨年12月にもニューデリーで会談しているが、その際、モディ首相は最大で14億ドルもの財政支援をすると発表した。前任のヤミーン大統領が親中派で、中国への依存が高まっていたが、ソリ大統領が誕生したことで、今後モルディブをめぐる印中間の争いが激しくなる可能性がある。

 続いてモディ首相は9日、5月21日に同時多発テロに見舞われたスリランカを訪問。シリセナ大統領と会談する前にテロ現場となった聖アンソニー教会を訪れ、インドはスリランカとともにテロに断固として戦うとの決意を示した。そして、スリランカ指導者たちと会談し、今後いっそう関係を強化していくことを約束した。

 以前からモディ首相は近隣諸国を重視する姿勢を示していたが、その背景には両国で影響力を強める中国への懸念がある。近年、中国はモルディブやスリランカに経済的なテコ入れを強化し、政治的な影響力も強めようとしているが、インドはその両国やインド洋を自らの裏庭と位置づけている。5月の総選挙で同じく勝利したオーストラリアのモリソン首相が、再任後初の外遊先でソロモン諸島を訪問し、最大188億円の資金協力を表明したことと今回のモディ首相の歴訪は、同じ尺度で見ることができる。

 中国の積極的な展開はモルディブやスリランカだけでなく、ミャンマーやバングラデシュ、パキスタンなどでも見られ、インド洋を中国とアフリカを繋ぐ重要な海上航路と位置づけている。要は、インドからすると四方八方を中国に囲まれるような形となることから、今回のモディ首相の訪問は、インド洋での覇権を握られないよう中国をけん制する意味もある。

Text by 和田大樹