「イランは終わり」トランプ氏の思惑とは? 想起させる2年前の舌戦

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◆誰が緊張を高めているのか?
 非現実的なことを言っても仕方ないのだが、仮にオバマ政権が現在も続いていたら、イラン情勢でこれほど緊張が高まることはなかっただろう。現在のイラン情勢において、もっとも“変数”となっているのはトランプ大統領であり、イランもこの変数に苦慮している感がある。トランプ大統領の支持基盤は国内のキリスト教福音派であり、現在の中東情勢において、同氏がイスラエルの代弁者としてイランに対応しているようにも映る。

 また、トランプ大統領の頭のなかには来年11月の大統領選挙がある。すでに同選挙を見据え、国内では“トランプへの勝利”とする動きが活発になってきているが、同大統領としてはできるだけ多くの外交成果を残し、大統領選挙に臨みたい。北朝鮮情勢だけでなく、イスラエル(国内のユダヤ層)が敵視するイランで、何かしら強調できる成果(根本的な解決でなくても)を収めたいところだろう。

◆イラン情勢をめぐる各国の立場
 今回の緊張において、イスラエルやサウジアラビアなど反イランの国々は、トランプ政権を支持する立場だが、欧州や日本は難しい舵取りを余儀なくされている。とくに、イランの外相は、トランプ氏の訪日前、6月の大阪でのG20を前に、突然伝統的な友好国である日本を訪問し、事実上、米国と結びつきが強い日本に一定の役割を担うよう求めた。

 また、中国やロシアは、米イラン関係の緊張が高まることを望んではいないだろうが、この緊張をイラン接近、また自らの覇権に利用したい意図はあることだろう。

◆今後のイラン情勢の行方
 今後の行方はどうなるのか。直接的な軍事衝突に発展する可能性は低いが、現在の状況をみてくると、ちょうど2年前の北朝鮮情勢を思い出す。2017年、トランプ大統領は金正恩氏をロケットマンと呼ぶなど、罵り合戦が続いたが、韓国に駐在員を置く日系企業の間では、在韓邦人の保護が大きな議論となるなど、政治的な緊張が高まっていた。もちろん、同盟国である日本や韓国、潜在的な競争相手である中国やロシアが地理的にも絡む問題であることから、今回のイラン情勢とすべてを照らし合わせることはできない。しかし、トランプ大統領のなかには、同じような戦略的レトリックがあるのかもしれない。

Text by 和田大樹