中国が大幅譲歩で継続、マレーシア鉄道計画 「一帯一路」のジレンマ

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 マレーシアと中国は12日、建設費用を5800億円圧縮することで、マレーシア東海岸鉄道の建設プロジェクトを再開することで合意した。このプロジェクトは、今年1月にマレーシアのアズミン経済相が、国家財政を圧迫するとして同計画を中止したことから、今回事実上、中国が大幅に妥協する形となった。マレーシアのマハティール首相は15日、建設プロジェクトの再開を発表し、完成時期が当初計画の2年半遅れの2026年末になるとの見通しを明らかにした。

◆一帯一路にとってのマレー半島
 中国が妥協した理由はどこにあるのか。まず、一帯一路を進める上で、マレー半島は北京にとって極めて重要だ。東海岸鉄道計画は、東海岸のクアンタン港と西海岸のクラン港を結ぶものだが、これは南シナ海とインド洋を繋ぐことを意味する。中国東部沿岸とインド洋、遠くは中東とアフリカとの海上貿易を発展させるには、マレー半島における影響力を高めることが重要となる。また、マラッカ海峡の通過は、費用や日数が掛かるだけでなく、世界有数の海賊出没地帯でもあるので、マレー半島を開拓する意義は極めて大きい。中国にとっては、建設費用を5800億円圧縮しても両海を横断する道がほしいのかもしれない。

 ちなみに、中国には、マレー半島北部タイのラノーン県とチュムポン県に跨がるクラ地峡において横断運河を作る構想があるという。クラ地峡は、東側のタイランド湾と西側のアンダマン海に挟まれるが、一番短い部分だと僅か44キロしかなく、仮にここに横断運河ができれば、中国は海上貿易面で大きな可能性を得ることになるだろう。

Text by 和田大樹