米海軍、レーザー兵器「HELIOS」を駆逐艦に搭載へ ドローンなど破壊

揚陸艦「ポンス」搭載LaWS / U.S. Navy photo by John F. Williams / Wikimedia Commons

◆「敵の船を焼き尽くすシステムは前進している」
 今月20日にワシントンDCで開かれた「指向性エネルギーサミット」で、米海軍の開発担当者、ロン・ボクソール准将が、「ヘリオス」の開発は2021年の運用開始に向け、順調に進んでいると発表した。准将は、「(敵の)船を焼き尽くすテクノロジーは前進している」と自信を見せた(アメリカ海軍協会情報サイトUSNI News)。

 ボクソール准将によれば、開発にあたっての最大の壁は、センサーとしての能力と攻撃力の両方を持たせることだったという。また、1キロ以上先の目標を破壊するためには、高出力でできるだけビームを収束させる必要がある。「ヘリオス」では、「スペクトラル・ビーム・コンビネーション」と呼ばれる、わずかに波長の異なるビームを発する100本程度のファイバーレーザーを混合する技術が用いられている。

 目下の課題は、既存のイージス戦闘システムにヘリオスシステムを組み込む方法だという。既存の近接防御システムとどのように置き換えるか、また、実戦投入にあたっては、イージス戦闘システムと連携がとれるよう、うまく紐づけをしなければならない。海軍とロッキードの間では、訓練、メンテナンス、サポート、追加装備のための最大9億4280万ドルのオプション契約が結ばれている。

◆無人兵器への有効な対抗策となるか
 近年、小型無人兵器の台頭が著しい。安価で運用も比較的簡単なことから、米国のような軍事大国だけでなく、小国や武装組織なども、上空を旋回して目標を探し自爆攻撃を仕掛ける「徘徊型自爆ドローン」などを実際に運用している。海でも、無人潜水艦などの開発が進んでいる。

 アメリカは、これらに対抗する有効な手段としてレーザー兵器の開発に着手してきた。国際電気工学・電子工学学会の情報サイト『IEEEスペクトラム』によれば、その最初の試作機は、9年前にノースロップ・グラマンの研究所で誕生した「5分間で100kwを出した固定システム」だという。これは、5.5kwの産業用レーザーを6基合体させたものだった。その後、20kwクラスの対ドローン用レーザー兵器が米海軍揚陸艦「ポンス」に搭載され、ペルシャ湾で試験運用された。昨年にはロッキードが60kw級の試作固定式レーザー兵器をハンツビル宇宙・ミサイル防衛基地に納品している。

「ヘリオス」はこうした積み重ねを経て、世界で初めて実用化されるレーザー兵器となりそうだ。ロッキードは航空機に搭載するポッド型のレーザー兵器の開発も進めている。SFの世界が現実となる時が、ついにやってきたようだ。

Text by 内村 浩介