東南アジアへのインフラ投資、日本が優勢に? 続く中国の悪手、高まる日本の評価

出典:首相官邸ホームページ

◆地域貢献と誠実な計画履行で信頼を得た日本
 これに対し、複数の民間企業が関わる日本の鉄道や道路の開発援助はリスクマネージメントができており、「高い安全性」「環境への優しさ」「信頼性」「あらゆる人々に寄与するインクルージョン」「地域全体の物流の向上」などを重視する、「高品質なインフラ開発のお手本」だと、G7やOECDは評価している(CNBC)。こうしたことを、日本は戦後の長い期間をかけて一つずつ丁寧に行ってきた結果、投資先の国々の信頼を得て、結果として東南アジア諸国に強い影響力を持つに至ったと、多くの識者が指摘している。

 “地元軽視”の中国のプロジェクトとは対照的に、「日本の鉄道や通信ネットワーク、農業開発は、地元の人々の技術訓練と教育に価値を置いている」と指摘する識者もいる。日中の姿勢の違いは、たとえば、安倍政権が東南アジア諸国にスマート・シティを作るために、まず8万人の「デジタル・スペシャリスト」を育てる援助計画を発表したことに表れていると、CNBCは報じる。一方で、中国のインフラ建設では、「大量の原料と労働者を中国から呼び込むばかりで地元企業の参入や住民の雇用には目もくれない」と、非難を浴びることが多い。

 インドネシアの海外直接投資監視機関、インドネシア投資調整委員会のトム・レンボン委員長は、「日本人は非常に几帳面。中国人はアグレッシブだ」と語る。そして、日本のプロジェクトは段階を踏んで計画的に進むが、中国のプロジェクトは行き当たりばったりで、実行力に懸念が残ると指摘する(ストレーツ・タイムズ)。中国主導のインドネシアの高速鉄道計画は、用地買収が半分も進まない段階で暗礁に乗り上げ、予定の3年遅れで事実上頓挫した。この計画は日本と中国が激しく争った末に中国が契約を勝ち取ったものだが、インドネシア国内では、「中国を選択した判断は正しかったのか?」という報道が目立っている。

                                                                                                                 

◆中国は日本の過去の失敗を教訓にできるか
 不調続きだとはいえ、中国が引き続き東南アジアへの投資に力を入れている事実は変わらない。2018年の中国の北米・欧州向けの直接投資(FDI)は実に73%減となったが、これは中国の海外直接投資自体が縮小したのではなく、よりアジア太平洋地域に重点を移したことを意味すると、世界経済フォーラムは分析する。

 アメリカも、アジアへのシフトを進めており、それが米中貿易戦争の遠因だとされる。そのなかで、「地政学的に比較的中立性を保ちながら、日本は東南アジアに広大なネットワークを築き、経験を積んできた」という、日本の「ユニークなポジション」を世界経済フォーラムは強調する。最近の例では、安倍政権がそれを利用し、メコン地域で150以上のプロジェクトを進めるなど積極的に動いていると指摘。先の首相の北京訪問では、アジア全域の約50のプロジェクトで中国との共同援助に合意するなど、柔軟な姿勢も見せた。

 もちろん、日本が東南アジアで得ている信頼は、一朝一夕に築かれたものではない。1986年にフィリピンのマルコス大統領がクーデターで亡命した際には、その執務室から日本企業とマルコス政権の間の汚職の証拠が多数見つかった。その反省から、日本のプロジェクトはその後、透明性を高め、フェアな競争を心がけ、ODAも積極的に行うようになったと、米シンクタンク、国際戦略研究所のシニア・フェロー、ジョナサン・ヒルマン氏は指摘する。

「北京は、約束をすることでは勝っているかもしれない。しかし、東京はそれを実現することと、それによる影響力の行使ではずっと優れている」と、米外交政策研究所のレポートは分析している。しかし、中国はしたたかだ。「中国は、より質の高いスタンダードを導入しなければならない。彼らは、それを自覚しているはずだ」と、日本の石井正文駐インドネシア大使はストレーツ・タイムズに語っている。中国が今後、80年代の日本と同じように失敗を糧にすれば、より強力なライバルとなるだろう。

Text by 内村 浩介