東南アジアへのインフラ投資、日本が優勢に? 続く中国の悪手、高まる日本の評価

出典:首相官邸ホームページ

「中国ではなく、日本がアジアのインフラ投資競争の勝利者になるか」(米CNBC)——。東南アジアを中心に、日本と中国のインフラ開発競争が繰り広げられるなか、昨年末ごろから複数の海外メディアや研究機関が、「日本の勝利」を示唆している。中国が掲げる「一帯一路構想」によるプロジェクトが多くの国で頓挫したり地元の反感を買ったりする事態になっている一方、日本のプロジェクトは、実現性と信頼性が高く、地域住民の利益に貢献し続けているという評価だ。物量で勝る中国を日本が「質」で上回る構図が定着しつつあるようだ。

◆「一帯一路」の失速
 中国の世界経済圏構想「一帯一路」(BRI)の2018年は、「最悪だった」とシンガポール紙、ストレーツ・タイムズは書く。マレーシアでは、現実主義者のマハティール首相の新政権が、中国の政府系企業と共同で進めていた鉄道計画とパイプライン計画を中止。中国側からの高利の借り入れが国家財政を圧迫しているというのが、その理由だった。一方、ラオスでは、中国南西部の昆明と首都ビエンチャンを結ぶ高速鉄道が建設中だが、大量に押し寄せた中国人労働者たちが、「このまま居つこうとしている」という噂が立ち、問題になっている。

 中国の援助で建設されたスリランカのハンバントタ港は、スリランカ政府が中国からの多額の債務を返済できなくなったため、中国に“接収”されたいわく付きの港だ。中国は、同港をライバル・インドを牽制する軍事基地にするつもりだと言われており、事実上の「経済侵略」「植民地」だという批判を浴びている。日本との競争の末、契約を勝ち取ったインドネシアの首都ジャカルタと第3の都市バンドンを結ぶ高速鉄道計画も、用地買収が進まず、頓挫している。

 これらBRIの失速を受け、インドネシアのシンクタンクの中国専門家、レネ・パティラジャウェーン氏は、「BRIは傷ついた獣だ」と表現。「習近平の側近たちが、民主主義国家がどのように動いているのかを知らない証拠だ」と、同氏は言う(ストレーツ・タイムズ)。東南アジアの民主主義国家では、「ローカルエリート」と「官僚」への根回しが重要であり、トップダウンの一党独裁国家の中国はそれがわかっておらず、地元への働きかけが足りないという見方だ。

Text by 内村 浩介