行き詰まった在韓米軍負担問題、縮小・撤退の可能性も 日本にとっても試金石

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◆日本との交渉にも直接的な影響
 トランプ大統領が、韓国の負担増に強くこだわるのは、在外米軍の軍事費負担の「パラダイム・シフト」を目指しているからだと、米シンクタンク、国際戦略研究所のシニア・アドバイザー、ビクトリア・チャ氏は言う(WP)。「アメリカ・ファースト」を唱えるトランプ大統領は、費用面でも戦力面でも、中東、アジア、ヨーロッパの駐留米軍の順次縮小・撤退と、関係各国への負担増を求めている。

 そこには、当然、日本も含まれている。チャ氏は、トランプ大統領は「来年、日本とNATOと同様の交渉をするにあたって、韓国との間で前例を作ろうとしている」と見ている。つまり、韓国との分担金交渉は、日本を含む世界中の駐留米軍の費用負担の試金石となると、米側は捉えているようだ。そう考えれば、北朝鮮問題を抜きにしても、我々日本人としても決して無視できない問題だ。

 一方、タフツ大学のソン氏は、『ザ・ヒル』に寄せたオピニオンで、仮に在韓米軍が撤退しても構わないという見解を示唆している。同氏は、「アメリカが同盟から離れるのも自由だし、同盟国を守る義務から解放されるのも自由だ。韓国から離れる選択をすれば、(米国の)安全は確保できるか? アメリカは、核武装した北朝鮮による解放戦争に確実に巻き込まれない選択をするか? そして、アメリカは、統一朝鮮との関係を修復できるか?」と問いかけ、その答えは、ベトナム戦争での米国の選択を先例として、「イエス、イエス、イエス、そしてイエスだ」と全肯定している。

 ちなみに、ベトナム戦争では1973年にパリ協定(和平)が締結され、米軍は南ベトナムから撤退。その後、1975年に北ベトナムが当時の南ベトナムの首都サイゴンを陥落させ、共産主義国家としてベトナムを統一した。

Text by 内村 浩介