行き詰まった在韓米軍負担問題、縮小・撤退の可能性も 日本にとっても試金石

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 在韓米軍の駐留費負担を巡り、米韓同盟に亀裂が入っている。昨年末に期限切れとなった防衛費分担金協定の延長協議で、トランプ米大統領は、約2倍の負担増を韓国に要求。これに対し、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は「到底受け入れられない」と要求をはねつけ、交渉は暗礁に乗り上げている。トランプ大統領は、金額面で妥協する代わりに、在韓米軍を一部撤退させるのではないかという見方もあり、交渉の行方しだいでは、米韓同盟の根幹が揺らぐ事態にもなりかねない。2月下旬に2度目の米朝首脳会談が予定されているが、その前に交渉がまとまらなければ北朝鮮情勢にも悪影響を与えかねないと識者らは懸念している。

◆負担倍増か短期契約か、はたまた撤退か
 韓国は昨年、20以上の拠点に展開する約2万8500人の在韓米軍に対し、約8億5500万ドルの駐留費を負担した。この分担金の協定は、5年周期で結ばれているが、米側が負担増を主張したため延長交渉がまとまらず、昨年末に失効した。新たな協定の交渉期限は4月15日だが、協議に詳しい韓国側の当局者によれば、それまでに合意に至る見込みは薄いという(ブルームバーグ)。

 この問題を担当する韓国国会の外交・統一委員会の所属議員らがメディアに語ったところによれば、アメリカは当初、昨年の2倍近い16億ドルを要求。やがて12億ドルに下げられたが、これも韓国側に拒否されると、米側は金額をそれ以上下げるのなら、協定の有効期限を通常の5年から1年へ短縮すると提示してきたという。

 さらには、在韓米軍の縮小・撤退をしばしば示唆しているトランプ大統領が、分担金交渉の不調をその口実にするのではないかという見方も広がっている。ワシントン・ポスト紙(WP)の報道によれば、韓国の議員や識者たちは、「トランプ氏は韓国の負担増に非常にこだわっている。もし、交渉がまとまらなければ、部隊の一部を撤退させるという、これまでには考えられなかった手段を取る可能性がある」と、懸念しているという。

 一方、米下院で1月30日、在韓米軍の縮小を事実上禁止する法案が与野党の8人の議員によって提出され、トランプ大統領を牽制。米国内でも早くもつばぜり合いが始まっている。

Text by 内村 浩介