ロシア、極超音速新兵器「アバンガルド」配備へ プーチン氏「迎撃は不可能」

Mikhail Klimentyev / Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP

◆米軍のミサイル防衛網でも撃ち落とせない?
 その「ジルコン」の詳細は不明だが、インドと共同開発した「ブラモスII」超音速ミサイルの国内版だとされる。「ブラモスII」は、核兵器の拡散を抑制する国際合意「ミサイル技術管理レジーム」(MTCR)が輸出用ミサイルに課す制約に合わせ、射程が300キロに抑えられているが、MTCRの制約を受けない国内向けの「ジルコン」は、それ以上の射程を持つ可能性が高い。既存のフリゲート艦や原子力潜水艦から垂直に発射されるよう設計されており、ミサイル巡洋艦アドミラル・ナヒモフとピョートル・ヴェリーキイも、「ジルコン」を各10発ずつ搭載すべく改修される予定だという(米技術誌ポピュラー・メカニクス)。

「ジルコン」が真にアメリカの脅威だと認識されているのは、「対艦ミサイル」と銘打ちながらも、洋上の艦船だけでなく、地上目標も攻撃可能だと見られるからだ。当然、核弾頭の搭載も可能と見られるが、爆薬を何も搭載しなくても、物体が超音速で衝突するだけでも甚大な被害が生じる。そして、「ジルコン」も「アバンガルド」同様、迎撃は非常に困難だという見方が強い。

「(ジルコンが)喧伝されている通りの働きを見せれば、アメリカの防衛網を突破して船を沈める可能性が高い。アメリカ海軍は、SM-3弾道弾迎撃ミサイルからSM-6艦対空ミサイルまで様々な防衛網を持っているが、それぞれ特定の脅威に対して最適化されている。SM-3は、一定のスピードで近づく弾道ミサイルを宇宙との境界で迎え撃つが、それはジルコンの想定飛行コースのずっと上空だ。SM-6は短距離弾道ミサイル、巡航ミサイル、対艦ミサイル、航空機を撃ち落とすことができるが、秒速1.7マイルで移動する物体を撃ち落とせるかどうかは分からない」(「ポピュラー・メカニクス」)

                                                                                                                 

◆アジア不安定化の懸念も
 これらのロシアの「恐るべき新兵器」は、ソビエト連邦時代の超大国の地位を懐かしむ国民に向けた回答であると同時に、対外的には、アメリカと軍事的に対等な地位につき、外交交渉などを優位に進めるツールとして利用されると見られている。WPは、トランプ大統領が短・中距離核兵器の保有を制限するINF条約からの脱退を宣言していることも、ロシアの対抗意識に拍車をかけていると分析する。

 プーチン大統領は、「アバンガルド」や「ジルコン」を手にしたことで、アメリカと全面核戦争をしても互角かそれ以上になったと自信を深めているようだ。では、アメリカ側から見て、実際のところはどうなのか? ワシントン・エグザミナー誌は社説で、プーチン氏の自信は「半分しか正しくない」としている。アメリカも超音速兵器の開発に取り組むなか、「アバンガルド」は確かに「それを凌ぐ印象的な計画だ」と同誌は書く。しかし、ロシア軍は、ミサイル管制システムや兵站、ミサイルを運用する艦艇や航空機の性能、軍組織の統率力などを見ても、総合的には米軍に劣るという見方だ。

「ポピュラー・メカニクス」も、「ジルコン」を撃ち落とすには、米軍のシステムのハード・ソフト両面の大きな技術革新が必要だと危機感を強める一方、現状で有効な対抗策はミサイルが発射される前に、運用する基地や艦船・航空機を破壊することだとしている。ひとたび超音速ミサイルが発射されれば、迎撃の決断に許された時間はたった数秒だ。いずれにせよ、アメリカの同盟国の日本にとっても、大きな脅威が誕生したのは間違いない。中国も超音速兵器の開発に熱心だと報じられるなか、核抑止力のバランスが崩れる危険が増している。

「ワシントンは、数秒以内に目標を叩くことができる自在に操作可能なミサイルの台頭により、ヨーロッパとアジアの一部が不安定化すると懸念している」(WP)。

Text by 内村 浩介

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