フランス・ストラスブールの銃乱射テロ 背後にISの存在はあるのか?

CMM via AP

◆テロリズム研究からの分析
 こういったテロ事件は欧米諸国でよく起こっている。近年、特に欧州ではISに参加した戦闘員が母国に戻ってテロを起こすことが強く懸念されてきたが、今回の事件は、現時点で明らかになっている情報では、通常頻繁に発生する「外国のテロ組織への参戦歴もない自国産のテロリスト」による事件である。そして、こういったテロ事件の場合、その多くで犯人は支持を表明するテロ組織との繋がりや接触はなく、テロ組織から物理的な支援(武器の供与、金銭の授受など)を受けていた可能性は低い。犯人は、ISなどのテロ組織がネット上に流す過激な動画や画像に共鳴し、もしくは何らかの刺激を受け、自らが貯めていた社会・経済的な不満をテロという暴力の形で示した可能性が高い。

 このようなテロは、外国のテロ組織、もしくは帰還した戦闘員が起こすテロよりもはるかに発生可能性が高い。なぜなら、国際テロ対策は欧米諸国を中心に徹底的に実行されており、外部から入り、そこに居座るのはそう簡単ではない。しかし、もともと欧米諸国内に存在する不満分子が、テロ組織の掲げる政治的目標、過激思想に共鳴し、いつの日かテロを実行するのを防ぐのは極めて難しい。いつ過激な思想に共鳴し、またいつ実行を決意したかを見極めるのはほぼ不可能に近い。当局による監視には限界がある。以上のように鑑みれば、欧州では今回のようなテロが再び発生するリスクは極めて高い。

Text by 和田大樹