【イスラム国の教訓(3)】支配領域を失ったISの脅威はなくなったのか?

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 2014年6月、イラク北部モスルにあるヌーリモスクにおいて、当時のISIL(イラクとレバントのイスラム国)の指導者、アブ・バクル・アル・バグダディ容疑者はIS(イスラム国)の建国宣言を一方的に行った。誰もそれが国家とは認めなかったが、それ以降、ISの支配領域は2015年をピークに、最大で英国領土に匹敵するまで拡大した。

 しかし、2016年以降、米軍やそれが支援する反政府組織などによる攻撃によって、ISの支配地域は徐々に縮小し、2017年に要衝であったモスルとシリア・ラッカが陥落したことは、ISにとって壊滅的なダメージとなった。そして今日、その支配領域はほぼすべて消え去り、以前のような姿はまったく見えない。イラクやシリア、そして国際社会はISの脅威から解放されたといえるのだろうか。

◆領域支配の崩壊は、ISの終わりを意味しない?
 先に結論を言うと、領域支配が崩壊したからといって、ISは根絶されたわけではない。なぜなら、以下のように3つの懸念事項があるからだ。各事項について簡単にみていきたい。

1.ISへ支持を表明する関連組織
 まず、ISはSNSを駆使して自作の画像や動画を次々と拡散するようになったことで、それに支持を表明する組織が中東やアフリカを中心に台頭するようになった。その先駆けとして、2014 年11 月、エジプト・シナイ半島を拠点とするイスラム過激派組織アンサール・ベイト・アルマクディス(Ansar Beit al-Maqdis)はISへ支持を表明し、組織名を「イスラム国のシナイ州」へ改名した。そして同じようにISへ支持を表明し、ISを自称する組織がイエメンやリビア、ナイジェリア、アフガニスタン、パキスタン、フィリピンなど各地で現れ、ISの国際的なネットワークが誕生した。そして今日、ISの領域支配はほぼ完全になくなったものの、関連組織は各地で現在も活動しており、何かしらテロ事件を起こしては犯行声明を出し続けている。

Text by 和田大樹