お金でEU市民に 富裕層に人気の「ゴールデン・ビザ」、EUが懸念を表明

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 一定額の投資をしたり、不動産を買ったりすることで、その国の居住権や市民権が手に入る。そんな「ゴールデン・ビザ」を売り物に、欧州各国は外国人富裕層から資金を集めている。しかしこの制度が移民受け入れを不公平にするうえ、犯罪につながっているという指摘もあり、制度の見直しが求められている。

◆お金で市民権を買う EUならではの恩恵が魅力
 現在EU加盟国のなかで「ゴールデン・ビザ」制度を持つ国は、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、キプロス、ギリシャ、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポルトガル、スペイン、そしてイギリスだ。申請者は対象国の不動産や国債などに一定額の投資をすることが条件となっている。申請が認められれば、居住権や市民権が与えられるが、EU加盟国ならどこでも居住、就労が可能となり、シェンゲン圏での移動の自由が約束されることが、制度の魅力となっている。

 英タイムズ紙によれば、2008年の金融危機以来、景気の後押しをするため多くの国々がこの制度を取り入れた。求められる投資額は国によってさまざまで、2010年のラトビアではわずか7万1150ユーロ(約920万円)だった。もっとも高いのは、今年のイギリスの200万ポンド(約2億8600万円)となっている。

Text by 山川 真智子