米韓演習中止後の竹島「防衛訓練」に海外も関心 本当に必要なのか?

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 韓国は18日、2日間にわたる竹島(韓国名・独島)防衛のための軍事訓練を開始した。この訓練は以前から定期的に行われており、日本政府も抗議を続けている。本来ならば今後の東アジア情勢を踏まえ日本と協力すべき韓国が、日本を仮想敵と見ることに疑問を呈する声が上がっている。

◆米韓演習は中止も竹島防衛訓練は決行
 AFPによれば、韓国が竹島防衛訓練を始めたのは1986年で、2003年以後は年に2回ずつ行われている。今回韓国はこの軍事訓練に、戦艦6隻と航空機7機を派遣。海兵隊の一団が上陸し、ほとんどが警官という住人40人ほどの島の防衛訓練にあたった。韓国国防部の報道官はこの演習は外部の勢力の侵略を防ぐための定期訓練だと説明しているが、その想像上の「外部勢力」がどの国であるかは明らかだ、とアジア・タイムズは述べている。

 CNNは、韓国は北朝鮮との緊張をエスカレートさせないためにアメリカとの軍事演習を縮小させたが、それから一週間もしないうちに、日本と領有権を争っている島の周りで軍事訓練を行うと伝えた。今回の訓練を受け、トランプ大統領の軍事演習凍結の判断は、大規模なものだけに当てはまるようだと報じている。

◆日本が竹島に武力行使の可能性はゼロに近い
 複数のメディアが、日本を敵と想定した竹島防衛訓練に疑問を呈している。フィナンシャル・タイムズ紙は、「これまで日本と韓国を火の海にすると脅してきた北朝鮮に対する軍事訓練を韓国がやめ、このタイミングで日本の脅威に目を向けることは、二重に困惑させられる」「日本が武力を使ってこの問題を解決することはありえない」という、ある日本の外交官の言葉を紹介する。そして日本からの攻撃に備えるという目的は、真面目なアナリストならおよそ信じることはないとしている。

 アジア・タイムズも、日本の竹島侵略はほぼ起こらないと見ている。韓国が日本に不信感を抱き厳しい態度を取る理由は、日本の植民地時代が歴史上もっとも暗黒の時代だったと教育されてきたからだと指摘。アメリカは、中国と北朝鮮への地域の均衡勢力として、民主的な同盟国である日韓の関係が親密になることを期待しているが、韓国には全くその気がないと同紙は述べる。そして、韓国の保守派の政治家が、日本との公式な同盟関係はどんなものであろうと政治的に不可能だと述べたことを伝えている。

◆韓国も日本の攻撃を信じていない? 訓練は国内向けアピール
 2012年のコリア・タイムズの記事によれば、韓国では竹島における日本との衝突のパターンが3つ想定されているという。1つ目は観光客を装った活動家や政治家が上陸するパターン。通常彼らはメディアの注目を浴びることが目的で、事前に動きを察知できるため、防御可能と見る。2つ目は日本がヘリコプターで上陸を試みるパターンだが、ヘリポートへの違法着陸を防ぐ対策は万全で、上空を飛行することはできても上陸はできないとしている。3つ目は日本の活動家の船が韓国の沿岸警備艇と衝突、またはむりやり上陸を試みることで、軍事衝突となるパターンだ。しかし、これはあくまでもそこだけの衝突で、安全保障上の深刻な問題にまで発展するとは見ていない。結局、韓国自体も日本が本気で攻めて来るとは考えていないと受け取れる。

 延世大学の北朝鮮専門家、ボン・ヨンシク氏は、資源や他の守るべき価値のない竹島は、誰も明らかに欲しがっておらず、軍事演習までする意義が分からないとFTに述べる。結局、演習は実効支配の強調と、国内向けのアピールのためなのかもしれない。しかしFTが言うように、竹島の主権の問題は、慰安婦と並んで日韓の延々と終わらない問題であり続けることは間違いない。

Text by 山川 真智子