米主導の有志連合に「戦争犯罪の可能性」 シリア空爆めぐり人権団体が非難

Gabriel Chaim / AP Photo

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは5日、米国主導の有志連合がシリア・ラッカで行った軍事作戦で数千人の民間人が死傷したとする報告書を発表した。アムネスティは有志連合の軍事行動について、「戦争犯罪となる可能性がある」と批判した。有志連合は2017年6月から10月にかけて、過激派組織「イスラム国」が首都と主張していたラッカに対し、空爆や砲撃を行った。

◆「民間人の死傷者は数千人」、アムネスティの主張
 ラッカでは、「イスラム国」が住民を「人間の盾」にしていたため多数の住民が中に取り残されていたが、有志連合の激しい空爆を受けた。アムネスティは、空爆の被害を受けた場所42ヶ所を研究者が訪れ、現地調査と住民112人に対するインタビューを行った結果として報告書をまとめた。報告書では、民間人の死者は数百人で、負傷者も合わせると数千人に上るとされている。

                                                                                                                 

 アムネスティは、有志連合の行った攻撃の一部について、「国際人道法への違反であり、戦争犯罪となる可能性がある」と主張。情報開示や疑惑の調査を行うよう要求した。

◆戦争犯罪とは? 区別と均衡性の原則
 戦争犯罪とは、国際慣習法や条約によって規定された戦争法規に対する違反を指すものとされている。アムネスティは今回、戦闘方法の規制や文民の保護などを扱う国際人道法への違反があったと主張している。

 文民の保護は国際人道法の重要な要素であるものの、民間人に犠牲が出る行為が全て戦争犯罪とみなされるわけではない。アムネスティはこの点に関し、攻撃に使われる砲弾の誤差範囲が広いことや攻撃のターゲットの選定方法などを問題視し、有志連合の攻撃は国際人道法上の「区別の原則(文民と戦闘員、民用物と軍事目標を区別し、それぞれ後者のみを標的にする)」や「均衡性の原則(文民や民用物への影響が予想される軍事的利益と比べて過大にならないようにする)」に違反していると指摘している。

◆米国防総省高官、「死者数は誰も分からない」
 一方、米国側はアムネスティの報告書に反発している。有志連合の報道官を務める米陸軍のショーン・ライアン大佐は、「イスラム国」が住民を「人間の盾」として閉じ込めているような場合には、犠牲を完全に避けることは難しいと反論した(AP通信)。

 また、米陸軍のトマス・ヴィール大佐は、報告書には事実誤認が含まれると主張し、アムネスティは「無罪であると証明されるまで我々を有罪として扱う」と批判。ラッカでの死者数については「誰も分からないだろう。分かると主張する人はウソをついている」とコメントした。

 米国防総省は、米軍の軍事行動による2017年の民間人の死者はシリア以外の国も含めて約500人だと推定しており、ラッカだけで数百人が死亡したとするアムネスティ側の主張とは開きがある。米軍側が発表する民間人の死者数は、行われた空爆の規模から見て少なすぎるのではないかとの批判を受けている。

Text by 後藤万里

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