中国初の国産空母「001A」、試験航海へ 空母戦力拡大を急ぐ狙いとは?

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◆狙いはアジアの海の覇権の奪取
 中国の空母開発計画は、1990年代半ばに、海軍内の一部の幹部グループによって始まったとされている。香港英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストが2015年に発表した特集記事によれば、幹部グループが香港の篤志家の資金援助でウクライナからソビエト艦を「カジノ船」の名目で購入した際には、中国政府の公式なバックアップはなかったという。

 しかし、その後、中国の空母計画は急ピッチで進んだ。フォーリン・ポリシーは、「中国の指導部は今や空母開発計画を積極的に受け入れ、艦隊強化の具体的な計画を持っていると考えるのが妥当であろう」と書く。一部軍人による「国家の威信」というあやふやな動機で始まった計画が、今は具体的な国家戦略になっているのだ。

 その狙いは、アジアの海の覇権をアメリカから奪うことにほかならないと、同誌は書く。米CNBCも、001Aの完成を「世界第2位の経済大国が、近隣と国際海域の権益を確保するために、総合的な空母開計画を進めている証拠だ」と、中国の覇権主義に警戒する。

◆アメリカ撤退後を見据えた戦略か
 フォーリン・ポリシーは中国の野望を次のように書く。「中国がアジアの戦略的なリーダーになるためには、アメリカを追い出す必要がある。つまり、空母艦隊は、太平洋のアメリカのパワーの中心に打撃を与える先陣の役割を果たすのだ。中国は、アメリカの海の支配を終わらせる能力を持った空母機動部隊を作ることにチャレンジしているのかもしれない。それは、軍拡競争でアメリカを上回るか、必要であればミッドウェイのような戦闘で勝てる部隊だ」

 とはいえ、空母戦力だけを見てもアメリカとの海軍力の差は、追いつくのは不可能としか言いようがないほど大きい。そのため、フォーリン・ポリシーは、実際には中国はアメリカとの直接対決は考えてはおらず、空母開発はより現実的な戦略に則っていると見ている。それは、アメリカがアジアからゆるやかに撤退したその先の将来を見据え、日本、韓国、オーストラリアなどの他の地域大国を抑えられる程度の空母戦力を今から準備しておくというものだ。アメリカがいつまでも今のレベルでアジアの海洋覇権を維持するコストを賄えないであろうことは、広く国際社会で認められていることだ。

 シンガポールの海上安全保障専門家、コリン・コー・スウェー・リーン氏は、中国は、空母機動部隊を将来的に、南シナ海、インド洋、既に中国海軍の基地がある東アフリカのジブチにまで広く展開する計画を立てていると指摘する(フォーリン・ポリシー)。軍事的プレゼンスと「一帯一路」などの経済圏の構築とを組み合わせて東南アジア諸国を支配下に置き、日韓豪印を牽制する戦略だ。001A自体は「1980年代の時代遅れの技術の集合体」(マカオの軍事アナリスト、アントニー・ウォン氏=アジアタイムズ)ではあるかもしれないが、中国の空母戦略全体を甘く見ていては日本も痛い目に遭うかもしれない。

Text by 内村 浩介