首脳会談で“でっちあげ”をするトランプ大統領 加首相に「貿易赤字ある」

Evan Vucci / AP Photo

◆大統領経済報告の内容とそれに対する反応
 ところが、最近発表された2018年のホワイトハウスの「大統領経済報告」では、また違う内容が伝えられている。これはトランプ氏自身のチームが作成し、彼自身の署名のある年次文書で、多数の貿易報告書や政策と矛盾していると、カナダ放送協会CBCが指摘する。

 一つの例はあるとされたカナダとの貿易赤字だ。トランプ氏はそれが存在すると主張し続けているが、彼が署名した文書では、カナダは、アメリカが黒字を出しているいくつかの国の中の一つとなっている。同文書では、「米国は、国際収支ベースでカナダに対し26億ドルの貿易黒字を出している」と記されている。

 カナダ・米国関係閣僚委員会のマルク・ガルノー交通大臣は、実際には貿易黒字となっているのは米国だという政府の見方を改めて表明した。

 ガルノー氏は、モントリオールの記者団に対しこのように述べた。「現時点では、両国間の貿易は1日当たり20億ドル以上あり、毎年アメリカが約80億ドルの黒字があることを指摘することは非常に重要だ」「それで両国間のバランスの取れた貿易、巨額の貿易について話すことができる。これはNAFTA協定と交渉する際に改善し続けていきたいものだ」

 この1月まで駐カナダの米国大使だったブルース・ヘイマン氏は、以下のようにツイートした。「(トランプ大統領、)あなたの友人に嘘をつくことは、関係を傷つけるだけです」「カナダは、私たちのために終始一貫していました。どうしてその関係を簡単に損なうことができますか? 恥を知れ!」「(トランプ氏は)簡単にカナダを犠牲にしている。これは間違っている」

◆最も信頼できる米通商代表部によるデータは?
 米通商代表部(USTR)によれば、現時点の最新データとなる2016年、米国はカナダに対し125億ドルの貿易黒字を維持している(米ニュースサイト「ビジネスインサイダー」)。

 米国は財貿易において121億ドルの赤字を出してはいるが、知的財産や旅行などのサービス貿易では246億ドルの黒字であり、それを補っている。

 財貿易は厳密に見ても、過去数年と比較して赤字は大きくない。商務省のデータによると、2016年の赤字は1993年以降最も小さく、ピークであった2005年の785億ドルから大幅に減少しているという。

Text by 鳴海汐