中国の「一帯一路」への対抗策を主導か 安倍首相の外交に海外誌が注目

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 安倍晋三首相のバルト三国・東欧諸国訪問、そして河野太郎外相のパキスタン、スリランカ、モルディブ、シンガポール、ブルネイ訪問と、年明けからここまで、比較的小さな国を舞台にした日本の外交活動が活発だ。米外交誌フォーリン・ポリシーなどの海外メディアは、一連の訪問は中国が進める世界戦略「一帯一路」構想に対抗する動きだと報じている。アメリカのアジア太平洋地域から撤退と中国の影響力拡大が懸念される中、日本主導の新たな経済・安全保障協力体制が国際社会で注目されつつある。

◆「中国に待ったをかける日本」という構図
 安倍首相は、1月12日から17日にかけて、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)とブルガリア、セルビア、ルーマニアを歴訪。いずれも日本の首相として初訪問となった。河野外相はこれに先立ち、パキスタン、スリランカ、モルディブを歴訪。今月10日から12日にかけては、シンガポールとブルネイを訪問した。

 国内では個別的な報道が目立ち、各国で北朝鮮問題への協力を訴えたことが中心的に報じられる傾向にあったが、外交問題に強い海外メディアでは、一連の日本の外交活動を連動したものと捉える。そして、日本の真の狙いは中国の「一帯一路」に対抗する日本主導の経済・安全保障の協力体制を築くことにあるという見方が広がっている。

「一帯一路」は、中国西部−中央アジア−欧州を結ぶ「シルクロード経済帯」(一帯)と、中国沿岸部−東南アジア−インド−アフリカ−中東−欧州」を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)からなる世界経済圏構想。中国は強大な経済力を背景に、エリア内の各国への開発援助や経済協力関係の強化を進めると同時に、南シナ海を軍事基地化し、パキスタンやスリランカに軍事利用を見据えた港湾施設を確保するなど、軍事的影響力拡大の足場も着々と固めている。

Text by 内村 浩介