米国に迫る中国の軍事力 驚異的な軍備の近代化、課題はソフト面

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◆実戦経験ではロシアに軍配
 ハード面の増強に熱を入れる中国軍だが、ソフト面の脆弱さが各メディアから指摘されている。

 IISSの所長はインデペンデント紙に対し、訓練、方針、戦略などの改善がなければ中国が西洋を追い越すことはできないと語っている。

 BBCでも同様に、新たに導入したステルス機の運用方法や、従来の第4世代機を交えた戦略を中国空軍は確立する必要があると指摘する。

 一方で中国と並んで軍事力の強化が報じられたロシアでは、状況がやや異なる。ドイチェ・ヴェレによると、ロシア軍は装備の近代化計画を持っているものの、経済状況から遅延している模様だ。しかし、実践経験の多さでは中国をしのぐ。IISSのギーゲリッヒ氏は、シリア空爆やウクライナ内戦への関与などを通じてロシアは経験を得ており、そこに同国の利があるとコメントしている。

◆アメリカとの衝突の懸念
 中国とロシアがアメリカに並ぶ力を手にしたことで、これら大国間での衝突が懸念される。ギーゲリッヒ氏はドイチェ・ヴェレに対し、そうした危険性はこの20年間で最も高まっている、とする見解を述べた。ただし衝突が不可避とまでは言えないと補足している。

 より現実的なシナリオは、大国同士の間接的な対峙だろう。BBCでは、中国が他国の軍隊に輸出した兵器が、アメリカ軍に対して使用される可能性を例示している。中国軍は長距離ミサイルなどを導入し、A2/AD(接近阻止・領域拒否)と呼ばれる戦略を採用している。これは戦闘地域にアメリカ軍を接近させず、遠方で撃破するものだ。中国の武器を購入した国はA2/ADを実践しやすくなり、アメリカ軍の脅威となる可能性がある。中国製の武器は攻撃能力こそ欧米製の75%ほどに留まるものの、価格は50%に抑えられており、「ビジネスとしては強力なオファー」になるとBBCでは見ている。

Text by 青葉やまと