注目集めるアジアの「空母レース」 中国の3隻目、日韓豪保有の可能性

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◆インドも新型艦建造中も「アジアの空母はまだ米空母には劣る」
 中国は、2030年までに4つの空母機動部隊を編成する計画だという。「ヴァリャーグ」購入からここまでは、計画は順調に進んでいるように見える。SCMPに語った情報筋は、「中国はヴァリャーグを改修して遼寧を建造することを決めた2000年代初頭に、強力でプロフェッショナルな空母開発チームを作った。技術アドバイザーとして多くのウクライナ人専門家が雇われた」と、中国の空母開発に旧ソ連の技術が直接流入していることを認めている。

 一方のインドは、旧宗主国・イギリスの中古艦に始まる半世紀以上に渡る空母保有国だ。現在はロシア海軍の「アドミラル・ゴルシコフ」を大規模改修した4万5000トンクラスの「ヴィクラマーディティヤ」を運用しており、中国に続く形で国産空母の建造にも着手している。タイの“ポケット空母”「チャクリ・ナルエベト」は本来であればハリアーを搭載して空母として運用可能だが、タイには稼働するハリアーがなく、今はやむなくヘリコプターの搭載にとどまっている。

 このように発展著しいアジアの空母開発ではあるが、ナショナル・インタレスト誌は、それでも世界最大・最強のアメリカ海軍のニミッツ級に比べれば、アジアの空母はまだまだ規模・性能面で劣るとしている。艦載機の搭載数ではニミッツの90機に対して遼寧とヴィクラマーディティヤは24機。最新の001Aでも多くても36機とされる。また、各艦に採用されている飛行甲板の先端が反り返ったスキージャンプ台方式は、艦載機に離陸のための燃料がより多く必要で、そのためにミサイルなどの兵装を減らさなければならないというデメリットがある。また、米海軍の大型空母で採用されているカタパルト方式のフラットな甲板の方が、短時間でより多くの艦載機を発進させることができる。

◆日本の空母は脅威への対抗策、韓国は名誉のため?
 近い将来、中国・インドに続く空母保有国になると見られるのが、日本と韓国だ。いずれもヘリコプター搭載艦として既に運用されているいずも型と独島型を改修することにより、比較的短期間で空母保有国になるポテンシャルを秘めている。昨年末には両国政府内で実際に検討が始まったと報じられている。

 外交誌ディプロマットは、「日本のケースでは、東アジアを取り巻く脅威の変化を反映していると言えよう。韓国は、自国の名誉のために(日本に)追いつこうとしているだけかもしれない」と分析。同誌は、「いずも」よりやや小型の「独島」を空母化するにはより大規模な改修が必要で、本来の能力を犠牲にする可能性が高いとして、韓国のハードルは日本よりも高いと見ている。

 この日韓の改修計画の進展を計る鍵は、搭載が想定される艦載機のF-35Bの購入だ。両国が正式に米国からF-35Bの購入を発表すれば、空母改修計画が現実になったと見ていいだろう。ディプロマット誌は、日韓がF-35Bを発注すれば、準空母と言えるキャンベラ級を保有するオーストラリアでも、同艦の改修による空母保有を求める世論が高まると見ている。中国が現実に着々と空母戦力の拡大を進めている以上、直接対峙する日本、インド、韓国、オーストラリアも圧倒的な空母大国のアメリカの庇護を求めるばかりでなく、独自に対抗せざる得ない情勢だと言えよう。

Text by 内村 浩介