米国民の64%“トランプ氏はツイッターやめて” フォロワー数2,000万の超強力ツール

 アメリカ大統領就任直前のトランプ氏だが、ここにきて選挙時のような挑発的な発言が増えてきている。当選直後、安倍首相との非公式対談のころは、日本について理解を示す親日的な一面を見せていた。がしかし、今年に入り新年早々、トヨタ自動車のメキシコ工場の建設計画について脅しにもとれる発言を行い大きな話題となった。

◆なぜ直接メーカーに声がとどくのか
 アメリカの国内で生産しなければ、メキシコ産のトヨタ車に高い関税をかけるという。もちろん、自国の自動車メーカーのGM(ゼネラルモーターズ)やフォードに対しても同じ姿勢で迫った。その結果、フォードはメキシコでの新工場建設の撤回を発表するに至った。どうしてこうも早くトランプ氏の主張がターゲットのメーカーに届くのか。それは氏の発言の多くがツイッターを通してのものだからだ。

◆SNSが勝利に導いた
 昨年11月のCBSのインタビューに対しトランプ氏は、「SNSは現代的なコミュニケーションスタイル」として、広告費をかける選挙運動ではなく、SNSを巧みに使ったことが大統領選勝利につながったと自ら語った。さらに今後も継続的に使うが、「控えめ」になるとも口にしている。

 ところが今回の自動車産業へ向けた警告ともとれるメッセージ(ツイート)については、控えめどころか本人も強力なツールと認識しての言動としか思えない。いまや氏のフォロワー数は2,000万以上にもなるのだ。

◆困惑する自動車産業
 今月米国デトロイトで自動車ショーが開催された。ショーは新しい車やテクノロジーのお披露目の場として、今後の自動車需要を占う場所でもある。しかしショーの準備を急ぐ自動車メーカーは困惑しているとブルームバーグは伝えている。自動車メーカーの「先が見えない」という不平は、トランプ氏の一連のツイートを受けてのものだ。ただでさえ米国マーケットではトラック需要は堅調だが乗用車のそれは2014年から縮小している。メーカーは消費者のニーズをシビアに読み取り、生産計画を立てている。メキシコは人件費が安いうえNAFTA(北米自由貿易協定)参加国のため、原産地規則を満たせば米国への輸出は関税が優遇される。つまり安く乗用車を届けられるということだが、それにいちいちツイッターで横やりを入れられては、たまったものではないだろう。

◆米国民も辟易?
 我が国の安倍首相もSNSの使い手とされる。前大阪府知事・市長の橋下徹氏もそのひとりだ。今後日本でも、SNSをたくみに活用する政治家が増えるだろう。しかし、世論への影響力は高まったとしても、はたして国益に結びつくものだろうか。トランプ氏の自動車産業に対するツイートは、国内の雇用面では効果があるかもしれないが、産業の健全な企業努力と競争の維持については疑問が残る。

 世論調査によると、米国民もトランプ氏のSNS利用について否定的な意見が多い。64%の回答者が個人的なツイッターのアカウントを使うべきではないと考えているのだ。とくに18歳から34歳のSNS世代で否定的な意見が多いとされる。昨年の11月の同調査では59%の回答者が否定的だったので、米国民のあいだで拒否感は高まっているともとれる。

 いよいよ今月の20日に大統領就任式となるが、それ以降のツイッターによる発言と、それを受けとめる政界、産業界、そして世論の動きに注目したい。また、大統領から国民に直接声を届けることができるSNSというメディアについて、大手メディアがどう対峙するのかももうひとつの注目ポイントかもしれない。

Text by 沢 葦夫