子供の遠征費に4500円補助事例も チャリティ活動が盛んなNZで目にする文化

画像はイメージ(Flicker/ ElCapitanBSC

学校で行われるファンドレイジング(資金集め)と聞いたら、何を思い浮かべるでしょうか。

【画像】ニュージーランドで行われているチャリティ活動

筆者が子供の頃の記憶を辿ってみると、募金や寄付、ベルマークや使用済み切手の収集などが思い当たります。

ニュージーランドに移住した筆者は、我が子が学校へ通うようになり、この国のファンドレイジング資金集めのユニークさや、人々が積極的にボランティアを行う精神に心打たれました。

ニュージーランドで行われる資金集めの手段は「チャリティ販売」

ニュージーランドでは、学校の修学旅行やキャンプ、スポーツチームの遠征費など、比較的大きな出費が必要なイベントがあると、各家庭の負担を減らすためのチャリティ活動が提案されます。

世帯収入に基準を設けず、各家庭に等しくお金が分配されています。

どの程度、修学旅行など学校生活での費用が補助されるかはケースバイケースです。

チャリティ活動の定番は、「ソーセージシズル」という食べ物の販売。

食パンに、バーベキューで焼いた玉ねぎとソーセージ、トマトソースなどを挟んだものです。

ニュージーランドの大手精肉会社であるHellers(ヘラーズ)は、国内の小中学校で行われるチャリティ活動に非常に協力的で、これまでに2億本以上のソーセージを寄付しています。

食パンやトマトソース、玉ねぎなどは学校の予算で用意し、週末にホームセンターの前で販売するのが一般的です。

ソーセージシズルを販売するチャリティ活動1回につき、ソーセージを無料で申し込めるのは1回だけ。

販売金額は2ドル(約180円)と安価な価格で設定されていることもあり、1回の活動でおよそ1000ドル(8万9000円)ほど売れると言われています。

2022年、息子の現地校のキャンプ費用にもチャリティ活動からの収益が使われました。

キャンプ費用は1人200ドル(約18,000円)。

この費用に対し、チャリティ活動としてソーセージシズルを販売したところ、1人150ドル(約13,500円)ほどで済みました。

その他にも、地域のFacebookページで生徒たちによる洗車サービスを宣伝したり、チケット制のクイズ大会を開催したりと、アイデアは実に多岐にわたります。

伐採で薪の販売をするチャリティ活動に参加

筆者自身もつい先日、息子が所属しているスポーツチームのキャンプの資金集めで、木の伐採に誘われました。

「ソーセージシズル」でのファンドレイジングはしたことはありますが、木の伐採には驚きを隠せません。

車で向かった先は、自宅から車で20分ほどのところにある松の木林。

メンバーの1人の知人が所有する土地だそうで、特別に伐採許可をもらったようです。

この日は、10人ほどが参加。

1人がチェーンソーで木を切り倒すと、すぐに倒れた木に付着している枝を3人がかりで切り落としていきました。

その後30cmほどの長さに丸太を切り、1箇所に積み上げます。

生の木は水分を含んでいるため想像以上に重く、なかなかの重労働です。

現地の方に比べてずいぶん貧弱な筆者は、腕とお腹で丸太を支えながら、必死に運んでは戻る往復作業を繰り返しました。

その丸太は、「スプリッター」という機械で薪用に小さくカットします。

カットした木を暖炉の薪として地域住民に販売し、売り上げでキャンプ費用の一部を賄うという取り組みです。

ニュージーランドで生まれ育った友人のルイーズによると、彼女が子供の頃も、今と同じようなファンドレイジングが学校や地域で盛んだったようです。

各家庭の経済的負担を減らす目的でこうした活動は始まりましたが、長年の時を経て今やニュージーランドの文化となりつつあります。

ソーセージシズルや薪売り、子供の洗車サービスなどを見かけると、ニュージーランドの人々は自身が幼かった頃の思い出が蘇り、応援したい気持ちでニコニコお金を払っています。

1つのプロジェクトのため、不特定多数が資金集めに協力をするという考えは、クラウドファンディングに通じるものがあるでしょう。

各家庭に費用を徴収する方が、誰の時間も奪わず楽だと思う方もいるかもしれません。

しかし、大人も子供も参加しながら、楽しんで資金集めを体験できるこの文化。

ニュージーランド人の大らかで温かな国民性が生み出した、この国の資産ではないでしょうか。

Text by 磯村さやか