誘拐されたという娘からの電話 正体は本人そっくりの「AIによる偽電話」

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母親のスマホにかかってきた1本の電話。電話に出ると「お母さん、私しくじったよ」と慌てている娘の声。

助けてと連呼する娘の声で、誘拐されたと悟った母親は一気にパニックに陥ります。

ABCのインタビューを受けた母親は、娘の声で電話がかかったとき、まさかAIによる偽電話だったとは一瞬も疑わなかったと話しました。

近年、AI技術を駆使した詐欺は急激に増加しており、2022年1年間でなんと10億ドル、日本円で約1300億円もの被害が報告されています。

母親が偽電話を受信した時、15歳の娘はスキー旅行中。

犯人は「警察に知らせたら、娘に薬物を服用させて、メキシコに連れて行き二度と娘に会うことはないからな」と脅したそうです。

犯人が娘の身代金として要求した金額は1億円。母親は、一瞬で頭が真っ白になり親族に助けを求めました。

知らせを受けた親族は、警察に通報。誘拐された娘を取り戻すために1億円を要求されたことを伝えると警察は「それはよくある詐欺の手口です」と説明したといいます。

父親がスキー場へかけつけ、娘の無事を確認できたことで、騒動は終結を迎えるのでした。

マカフィー株式会社が行った調査によると、世界中の日本を含む7か国の成人7054人を対象としたAI音声詐欺の被害調査で、知人を含め自身が詐欺に遭遇した件数が最も多い国はインドの47%、次にアメリカの32%、日本は最下位でわずか8%だったことが分かっています。

AIを使った詐欺の手法は、音声工作によるボイスメッセージだけでなく顔複製によるビデオ通話を使ったスキームもあり、偽造が巧妙化しています。

成人の半数以上が何らかのデバイスで1週間に1回強自分の音声を共有する今日、個人の音声や画像を複製するネタはネット上に溢れてしまっているといえるのです。

日本は被害件数が少ない国ですが詐欺の手法が進化しているため、むやみに個人情報を共有せず、家族間での合言葉を決めるなど、セキュリティへの意識を高める必要があるでしょう。

技術の進歩が生活の質を向上させる一方で、犯罪者の手口も進化させてしまう時代。

疑わしい電話を受けたらすぐに送金せず、本人に確認して焦らず対処できるようにしたいですね。

Text by 本間才子