テイラー・スウィフトも被害 アメリカのAI規制法の動きは 懸念される大統領選

Chris Pizzello / AP Photo

◆画像だけではないAI悪用
 アメリカでは数年前からAIの開発や使用を規制しようとする動きが出てきているが、現在は連邦レベルでの法律が存在しないのが実状だ。昨年5月に民主党のジョー・モレル下院議員が同意のない性的画像を連邦レベルで犯罪化する法案を提出したほか、昨年10月30日にはバイデン大統領がAIの安全な開発および利用に関する大統領令を発令。またABCニュースによると、今年1月10日には下院で民主・共和両党議員による「AI不正禁止法(No AI Fraud Act)」法案が提出されたばかりだった。

 今回のテイラー・スウィフトの一件では、ディープフェイクAIの画像がどれほど簡単に作成され、拡散される可能性があるかが明るみに出た。もちろんセレブだけにとどまらず、一般人が被害に遭う場合もあるだろうし、一般人だからテイラー・スウィフトのような注目を浴びず、擁護もされないまま泣き寝入りする結果となることもあるだろう。

 AI悪用問題は画像だけにとどまらない。CNNによると、23日に行われた米大統領選ニューハンプシャー州予備選前には、民主党員をターゲットにして予備選投票を行わないよう呼びかけるバイデン大統領のフェイク音声を用いたロボコール(自動音声電話)が拡散された。

 11月の大統領選が近づくにつれ、今後もアメリカ国内外から政治利用されるディープフェイクAIが出てくるだろう。その前に、AI悪用を連邦レベルで規制する何らかの法律が制定されることが期待される。

Text by 川島 実佳