中国の宇宙への野望 月面基地建設、宇宙ステーション打ち上げなども計画

Chinese State Administration of Science, Technology, and Industry for National Defense via Xinhua via AP

 中国は現在、ロボット探査車を火星に向かわせているほか、再使用型宇宙往還機の開発や有人月面探査の計画も進めており、宇宙計画への野心を高めている。その一環として、3回目となる探査機の月面着陸を成功させた。

「嫦娥5号」は、1970年代以降行われていなかった月の岩石を地球に持ち帰るプロジェクトだ。12月2日、サンプルの採取に成功したと中国宇宙当局が発表した。探査機「嫦娥5号」は12月1日、月の西側にある「嵐の大洋」に着陸を果たしていた。

 中国共産党は同国の経済成長に匹敵する国際的影響力を発揮したいと考えており、同党にとって宇宙探査は、政治的な力を誇示する機会だ。

 中国は、アメリカやロシアからは一歩遅れをとっているものの、軍との連携のもと秘密裏に進められている宇宙計画は、急速な進展を見せている。成功すれば宇宙飛行の最先端国にもなれるような、独自のミッションを生み出しているのだ。

 オークランド大学に所属する宇宙生物学者で地質学者でもあるキャスリーン・キャンベル氏は、宇宙探査においてはこれからの10年間が「きわめて重要」な期間になるだろうと予想する。

「大気圏内から、さらに遠くの『深宇宙』と呼ばれるものに再び目を向けようという期間です」と同氏は言う。

 中国は2003年、旧ソビエトおよびアメリカからは40年遅れて、有人地球軌道飛行に成功した3番目の国家となった。2011年には中国初となる仮設型の軌道上実験室を打ち上げ、2016年には2機目の打ち上げを行った。2022年以降には、恒久的な宇宙ステーションの打ち上げも計画している。

 中国外交部の華春瑩報道官は今回の探査機の着陸について、「宇宙空間の平和的な利用に向け、国際社会との協力を進めるうえで歴史的な一歩だ。中国は全人類の利益のために活動するという精神のもと、国際社会との協力、宇宙探索、宇宙空間の利用を進めていく」と述べている。

 2003年に宇宙飛行士の楊利偉氏が宇宙飛行を行った後、宇宙当局は、早ければ2020年にも有人月探査を実行したいと表明した。しかし実現するかは予算と技術の状況次第だとしており、目標は2024年以降に延期となった。

 宇宙当局は、最新の探査機「嫦娥5号」の着陸地点を、アメリカやソビエトの探査機が着陸した辺りからはかなり遠い「嵐の大洋」としたことについては、理由を明らかにしていない。しかし「嵐の大洋」を選んだことで、有人ミッションでの調査地点を決める際のヒントが得られる可能性はある。

 中国の宇宙往還機は、アメリカが打ち上げた「スペースシャトル」や、旧ソビエト連邦が開発するも短命に終わった「ブラン」の中国版となる見込みだ。

 同国はまた、「北斗」という独自の測位衛星ネットワークも打ち上げているため、共産党の軍事組織である中国人民解放軍は、アメリカ運営のGPSや競合ロシアのシステムに頼らず活動できるようになった。

 昨年には、ほとんど研究が進んでいない月の裏側に世界で初めて探査機を着陸させるなど、ソビエトやアメリカの新たな試みを踏襲する「模倣型」ミッションを脱し、独自の試みで世界初の功績をあげている。

 そのとき打ち上げた探査機「嫦娥4号」とロボット探査車は現在も稼働中で、月の裏側を横切る軌道船を通してデータを送信している。中国の探査機として初めて月面に着陸した「嫦娥3号」も、まだ交信中だ。

 中国最初期の有人宇宙船「神舟」シリーズは、ロシアの技術をもとに開発された。高出力ロケット「長征」は、先に打ち上げられたソビエトやアメリカのロケットと同様、第二次世界大戦後のナチス・ドイツから入手した技術を用いて開発された弾道ミサイルをもとにしている。

 1960年代には、アメリカとロシアが驚異的なスピードで宇宙開発競争を繰り広げ、犠牲者も出したが、それに比べると中国の歩みは慎重だ。同国はこれまでのところ、事故なく有人ミッションを成功させている。ロボット車両の打ち上げについては技術的な問題で延期されたこともあったが、問題はすでに解決しているようだ。

 中国は、同じアジアの近隣国である日本やインドを戦略的なライバルと認識しており、競争は激しさを増している。日本もインドも自国の探査機を火星に送り込んだ実績を持つ。

「嫦娥5号」は月の岩石を採集するミッションだが、日本の宇宙当局は、小惑星「リュウグウ」のサンプルを収集するというさらに困難な偉業を成し遂げた。この「はやぶさ2号」は、12月6日にサンプルを地球に持ち帰った。

 中国は宇宙開発において、自信を高めるとともに目標も拡大している。

 同国は火星探査をめぐる競争にも参戦しており、7月には火星に水が存在する兆候を見つけようと、ロボット探査車を乗せた探査機「天問1号」を打ち上げた。探査機は2月に4億7000万キロメートルの旅を終える予定だ。

 また、早ければ2022年には、恒久的な有人宇宙ステーションが完成する見込みだ。

 中国は、国際宇宙ステーションへの参加を拒否されている。非軍事的な宇宙機関で運営するはずの事業に、中国の軍事関係者が参加することについて、アメリカが抵抗を示したためだ。

 中国宇宙当局月探査センターのペイ・シャオユ副長は報道陣に対し、いずれ国際的な月面研究基地を建設する計画だと明かしている。

 中国の宇宙計画は軍が運営しているため、多くの功績を残しているにもかかわらず、ほかのどの国よりも秘密主義的である。

 ソビエトやアメリカの宇宙飛行士は、広報活動として世界各地をめぐることで、国外の観衆を熱狂させたが、楊氏をはじめとする中国人宇宙飛行士がフライト後に公の場に姿を現したのは、ほんの数回、それも短い時間に過ぎない。

 中国宇宙当局は9月、宇宙往還機が無事にテストフライトを終えたと発表したが、いまも詳細は明かされておらず、機体の写真さえ公開されていない。

By JOE McDONALD and VICTORIA MILKO Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP