ユーザのプライバシー保護に取り組むグーグル AIアシスタントの機能向上も

AP Photo / Tsering Topgyal

 5月7日、グーグルはユーザーが外出先や自宅での行動追跡をどの程度許可するのかを細かく制御できる新しいプライバシーツールを発表した。昨今、大手ハイテク企業によるデータ収集の実態に対する監視がますます厳しくなっている。このツールの発表は、そのような社会の厳しい目に対抗するハイテク企業の広範な取り組みの一環となる。

 グーグルはまた、人工知能を備えた音声アシスタントの新バージョンや、同社のスマートフォン製品のブランディング再構築を目的とし、より安価なスマートフォンとなるピクセルの最新機種も発表した。

 グーグルの最高経営責任者であるサンダー・ピチャイ氏は、年次開発者カンファレンス「グーグルI/O」の冒頭の基調講演で、同社はプライバシーに関して「絶えず進化を続けるユーザーの期待」を先取りするため、さらに多くの取り組みを始めていると述べている。

                                                                                                                 

 会議では終日、このような取り組みに対し一貫して焦点が当てられた。定常的に同社のサーバーに情報が送信される代わりに、今では顔認識や音声検索を含め、いかに多くの人工知能の機能がデバイス上で処理されるようになっているかを強調するデモンストレーションがあちこちで行われた。

 しかし、中にはグーグルのプライバシーに関する改善は、同社の広告主導型のビジネスモデルを脅かす可能性のある、さらに大きな変化を回避していると考える批評家もいる。

「これらの取り組みは、いわば最低限度の改善に過ぎない」と広告ブロックおよびトラッキング防止ソフトウエアを提供しているゴーストリーの社長、ジェレミー・ティルマン氏は語る。ティルマン氏は、「それらは決して悪いわけではないが、ユーザーのプライバシー保護を大幅に改善するのではなく、企業によりよい情報を提供するように設計されているようだ」と述べている。

 グーグルおよび他の巨大ハイテク企業におけるプライバシーとセキュリティ対策に対しては、既に1年以上も前から厳しい監視の目が向けられている。フェイスブックは4月末に自社のカンファレンスにて、「ソーシャルネットワーク上で広範に人々を結ぶのではなく、もっとプライベートなチャンネルで人々を結ぶこと」に関するテーマを掲げた。

 グーグルは、多数の自社製品にわたり、小規模ではあるが具体的な変更を実施すると発表した。同社は、アプリやサービスを通じて収集したデータや検索要求から浮かび上がる特定のターゲットに向けたデジタル広告を販売し、年間数十億ドルの収益を上げている。

 同社は、例えばグーグルマップや検索アプリを拡張し、「シークレットモード」機能を追加すると発表した。現在、ブラウザのクロームやユーチューブでも同様の機能が働くのと同じように、シークレットモードが有効になると、アプリはユーザーの検索や行動の履歴を記録しなくなる。

 アンドロイドのシニアディレクター、ステファニー・カザーバートソン氏は、ユーザーの位置情報は「最も私的な情報の1つ」であると考えている。グーグルのスマートフォン向けアンドロイドOSの最新バージョンは、アプリがユーザーの位置情報に悪意あるアクセスを行う可能性のある場合、警告を発する機能を有している。現在、新しいオペレーティングシステムとして知られるアンドロイドQも、使用中のアプリにのみデータの収集を許可することで、アプリによる位置情報へのアクセスをより制限する仕組みを提供している。しかし、アプリの中には、バックグラウンドで継続的に位置情報を収集し続けるものもある。

 位置情報は、グーグルにとってあまり触れられたくない話題だ。2018年、AP通信の調査によって、ユーザーがアンドロイドの「ロケーション履歴」設定をオフにした時も、グーグルはスマートフォンの位置情報を保存し続けていることが明らかになった。

 グーグルはまた、ウェブを利用する人々をサポートし、ブラウジングを円滑にするソフトウエアの一部である、いわゆる追跡クッキーの作成をユーザーが抑制できるようにクロームの見直しを行うとも発表した。この動向は、デジタル広告業界に深刻な影響をもたらしかねない。従って、企業はサードパーティーのウェブサイトや広告主がユーザーを追跡するために使用するクッキーを特定する必要に迫られることだろう。

 今後数ヶ月の間に、ユーザーがそれぞれのサイトにログインしたままで、もしくは、ウェブサイトの個人設定を変更することなく、こういった追跡クッキーの大半を消去できるようになるとグーグルは明らかにしている。ユーザーがすべてのクッキーを消去できるブラウザは、唯一クロームだけである。

 アップルのサファリやモジラのファイアフォックスなど、クロームと競合するブラウザには、各サイトがオンライン上のユーザーのアクティビティを追跡するのをブロックするプライバシーツールが既に組み込まれている。

 電子プライバシー情報センター所長のマーク・ローテンバーグ氏は、プライバシー対策は依然として見栄えがしないと感じている。「連邦取引委員会が企業に対して強制的な執行措置を講じる用意がない限り、プライバシーが保護されるという確約はほぼ無いに等しい」。

 人工知能に関してグーグルは、同社のデジタルアシスタントがレンタカーや映画チケットを予約できるようにするアップデートを今年実施する予定があると発表している。

 同社によると、今年の後半、このデジタルアシスタントはアンドロイド端末上のオンラインフォームを使い、ユーザーに代わって予約をできるようになるという。グーグルは昨年、この機能の背後にあるデュプレックスと呼ばれる技術を用い、レストラン予約を行うために自動的に電話を掛けさせるデモンストレーションを行い、革新的なテクノロジーを華々しく発表した。

 グーグルアシスタントは、スマートフォン上で直接稼働するようにコンパクト化され、特定のコマンドを理解したりコマンドに従って対応したりする際に同社のクラウドサーバーに接続する必要がなくなる。電話をかける機能に特化したアシスタントは、今年の後半、ピクセルの新しいモデルに搭載される予定だ。

 また、グーグルは、新しい廉価版のスマートフォン、ピクセルに加え、「ネストハブマックス」と呼ばれる家庭用スマートディスプレイスピーカーも発表した。いずれのデバイスにも人工知能の機能が満載であり、その大半はサーバーに情報を送信することなくデバイス上での処理が可能になっている。
 
 ガートナーのアナリスト、ウェルナー・ゲルツ氏は、サーバーへの情報送信が減少することから、グーグルが入手する顧客情報がわずかに減少する可能性があると語る。しかし、同氏は、グーグルは既に数多くの製品を通じて情報を収集しており、データを大規模に取得し損なうという状況にはならないだろうという。

 ネストハブマックスの発表は、グーグルが2014年に買収したネストとの統合が進んだことを示唆している。ネストハブマックスの価格は229ドルだ。その表示画面は昨年発表され、現在はネストハブと改名されたグーグルホームハブに類似しているが、ネストハブマックスには、ビデオ通話用にスイッチをオンオフできるカメラが追加されている。

 このハブは、顔認識機能を利用し、家族の1人1人を区別して認識するように設定が可能だ。この場合も、デバイス自体が認識を行い、クラウドの助けを必要としない。

By RACHEL LERMAN and MATT O’BRIEN AP Technology Writers
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP