「キャッシュレスのみ」店舗はNG アメリカの自治体で弱者保護の動き

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 アメリカ・ペンシルバニア州のフィラデルフィア市で、キャッシュレス決済のみを受けつける店舗を禁止する条例案が成立した。現金以外の支払い手段を持たない貧困層などの弱者に配慮した形だ。同様のルールを検討する都市もあり、キャッシュレスを進めたいビジネス界からは不満の声が出ている。

◆銀行口座もない家庭。電子決済とは無縁
 この条例案は2月に市議会で可決され、すでに市長が署名済みだ。7月1日から施行され、違反したビジネスオーナーには最大2000ドル(約22万円)の罰金が科される。ほとんどの小売店が対象となるが、駐車場の支払い、コストコなどの会員制クラブ、ホテルやレンタカー会社などクレジットカードでのデポジットが要求されるビジネスには適用されない。

 世界的なキャッシュレスの流れに逆行している感もあるが、実は同様の法案がニュージャージー州でも可決されており、ニューヨーク、ワシントン、サンフランシスコ、シカゴなどでも現金拒否の禁止が検討されている。理由は、現金を禁ずることが差別にあたるからだ。連邦預金保険公社の2017年の調べでは、全米で銀行口座を持たない世帯は全体の6.5%と推定されている。日本と違い、アメリカの銀行では一定額が口座に入っていないと口座管理料や手数料を取られる場合が多く、これが払えないためと思われる(ニューヨーク・タイムズ紙、以下NYT)。

 フィラデルフィア市の法案の共同発起人の一人、ビル・グリーンリー市議は、クレジットカードを持たない人は低所得者、マイノリティ、移民が多く、たとえ意図はないとしても、現金を排除することはある種の差別につながると述べている(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)。ニュージャージー州の法案の発起人の一人、ネリー・ポウ氏も、「すべての人々が銀行やクレジットカードにアクセスできるわけではないと認識することが重要」とNYTに説く。また、年配者のなかには電子決済の設定をしていない、利用するのが不安という場合もあると説明している。

Text by 山川 真智子