ロボットが畑監視、除草、肥料やり 英スタートアップが農家で試験

AP Photo / Kelvin Chan

 スモール・ロボット・カンパニーの共同創設者、ベン・スコット=ロビンソン氏は、「私たちの取り組みは、人間の手ではできない仕事を担うというものです」と言う。「畑を歩き回って作物をひとつひとつチェックし、それをひとつひとつ世話していくという作業は、農家の方々が行おうとすれば肉体的に限界があります。これを実現するには、この作業をこなせるだけのロボットのような根気と、AIのような集中力、精度を持つものを導入するしかありません」

 さらに大規模な試験導入が計画されているのは2021年で、完成形のマルチロボットシステムが一般販売されるまでにはまだ何年もかかりそうだ。しかし流通が可能になれば、すでに進化を始めている農作業の自動化が、さらに次のステップに進んだということになる。自動運転機能を搭載したトラクターや、搾乳ロボットは、実用化されて久しい。最近では、作物をモニタリングするドローンも利用可能になった。

 今回の試験導入には参加していないが、果物農家を営むティム・チャンバー氏は、最終的には農家において「すべてのものを自動化できるといっても過言ではない」と言う。全英農業者連盟の会員でもある同氏によると、細心の注意を必要とするため、手作業で行っているラズベリーやいちごの収穫など自動化が比較的困難な作業もあるが、それさえも自動化できる見込みがある。

 フロリダ州のハーベスト・クロー・ロボティクス、スペインのアグロボット、イギリスのドッグトゥース・テクノロジーズ、ベルギーのオクティニオンといった企業はいずれもベリー収穫用のロボットを開発中だ。カリフォルニアのスタートアップ企業アイロン・オックスと日本のスプレッドは、屋内の自動化農場で野菜を栽培している。ボッシュのスタートアップ企業、ディープフィールド・ロボティクスは現在、雑草を地面で潰す除草ロボットの製造に取り組んでいる。昨年には、イギリスの研究者らが自動化機械のみを使用し大麦の植え付け、モニタリング、栽培、収穫までを行っており、これは世界で初のことだという。

 より根本的な問題となるのは、「そのようなロボットの構築費用であり、さらに製造までには研究も必要だ」とチャンバー氏は言う。同氏によると、空輸にかかる費用を抑えることができれば、例えば労働力の安い外国から果物を空輸して仕入れるといった工程をより安価に進められる可能性がある。スモール・ロボット・カンパニーは、一括では巨額の設備投資をしづらい農家に対しその金銭的な負担を軽減するため、同社のサービスを、1ヘクタールあたり年間600ポンド(765ドル)で販売する月単位の定額制を設ける予定だ。

 明るいオレンジ色の3Dプリントが施されたボディと、全地対応型の大きなタイヤを備えたトムの見た目は、巨大なローラースケートのようだ。スコット=ロビンソン氏によると、トムは軽量型となっているためトラクターのように土を踏み固めてしまうことはない。

 バトラー氏の畑では、生育期の間、トムが何十万もの高解像度の映像を撮影しながら作物の植えられた列に沿って動き回る。撮影した映像は、どれが小麦でどれが雑草かを指示するよう組み込まれた人工知能プラットフォーム、ウィルマに登録される。スモール・ロボット・カンパニーは、2019年にもう2台のロボット、ディックとハリーの試験導入を開始する予定だ。ディックは、根の周辺の土に直接肥料を注入するため肥料を畑一面に散布する無駄を省くことができ、さらにレーザー型またはマイクロスプレー型の薬品を使って雑草を駆除することもできる。ハリーは、種をすべて同じ深さに等間隔で土の中に植え付け、トラクターの場合のように溝を作ることなく作業ができる。

By KELVIN CHAN, AP Business Writer
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP