フェイスブックの表示改革、ユーザにとって良いこと? 改革の背景とその評価

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 2018年に入りフェイスブックはある重要な改革を行った。その改革とは、ニュースフィードに表示される投稿の優先順位の変更だ。これによって、同社に出稿された広告よりユーザの家族や友だちの投稿が優先的に表示されるようになった。この改革を行った背景は何なのか、そしてこれはユーザを幸せにするものなのだろうか。

◆フェイスブックはリアルなつながりを強化する?
 米CBSニュースは、「フェイスブックのニュースフィード改革はユーザとビジネスにとって何を意味するのか」というタイトルの記事で考察を行っている。この記事では今回の改革の背景として、昨今よく言われる「フィルターバブル(SNSがユーザの好むものばかりを見せる結果、異なった意見がわからなくなる現象)」の弊害、さらには2016年に行われた米大統領選に悪影響を与えたのではないかという疑念を払拭する意図を指摘している。こうした意図を実現するために、ユーザの生活には本来関係のない広告の表示を減らし、現実に関わっている家族や友だちの投稿を優先する改革は、的を射ているように見える。

 だがしかし、広告がユーザの目にとまる機会を減らされた企業から見れば、この改革は利益を損ねるものである。フェイスブックにとっても、広告収入を減らす結果を招くだろう。こうした憶測から改革を発表した直後の1月12日、フェイスブックの株価は6%下落。ビジネスの観点からすると、この改革はフェイスブックに短期的な利益をもたらさなかった。

 それでは、この改革はユーザに何をもたらすのだろうか。動画広告やブログ記事を楽しみにしていたユーザにとっては、楽しみを減らされることを意味しているだろう。しかし、現実につながりのある家族や友だちの笑顔を見ることこそが、ユーザを最も幸せにするのではないだろうか。CBSニュースの記事はこうした見解を示したうえで、フェイスブックは今回の改革で短期的な利益を求めず、「ユーザの満足」という長期的な利益を得るだろうと述べている。

◆現在の「プライベート」は「ソーシャル」でもある
 ブルームバーグは、CBSニュースとは対照的に「フェイスブックの新しいミッションは不可能だろう」という記事でフェイスブックの改革が的外れなものであると論じている。

 この記事が指摘しているのは、SNSが浸透した現代社会において、ユーザのプライベートとは「リアルな」家族や友だちとのつながりとSNSが作り出す「ソーシャルな」つながりが混然一体となったものである、という事実だ。

 フェイスブックの改革は、「リアルな」つながりを復権させようという動きと解釈することができる。しかし、リアルとソーシャルが混然一体となっているならば、単純にリアルなコンテンツの表示優先度を高めたところで、ユーザはリアルなコンテンツをより好むようになるわけではない。フェイスブックの思惑とは反対に、ユーザは家族や友だちのような素人が作ったコンテンツではなく、つながりのないプロの手による広告動画のようなソーシャルなコンテンツを探すことに時間をかけるようになることもあり得るのだ。

◆フェイスブックだけでは解決しない
 英ガーディアン紙にいたっては、SNS全般に認められる弊害を指摘して、フェイスブックの改革が成功しないと評する記事を掲載している。この記事のいうSNS全般に認められる弊害とは、結局のところ、SNSユーザは「SNS依存症」に陥りやすいということである。そして、フェイスブックが成長できたのも、ユーザが適度にフェイスブックに依存してくれたからに他ならない。

 SNS依存症に言及したうえで、同紙の記事は次のように主張する。もしフェイスブックが本当に、SNSがユーザに与える悪影響を撲滅したいのであれば、ニュースフィードを改革する程度では収まらない。真にやるべきことは、SNS依存症にいたる原因を生んでいる同社がユーザに対する影響力を小さくすることである。ただ、これでも足りない。SNS依存症の種をまいているのはフェイスブックだけではないからだ。グーグルやアップルなどのインターネット企業のすべてが、SNS依存症やフェイクニュースに対して対策を講じるべきなのである。

 このような主張は、いささか急進的すぎるように聞こえる。だがしかし、フェイスブックやグーグルといったインターネット業界の巨人たちは、私企業というにはあまりにも大きい影響力を持ってしまっているのも事実である。こうした巨人たちには、その影響力に相応しい倫理観のある振舞いが求められて然るべきなのだ。そして、巨人たちが責務を果たす態度を示し続けることが、SNSをはじめとするインターネット・コンテンツと無縁には生きられない現代人の幸せにつながるのではないだろうか。

Text by 吉本 幸記