「ロボット税」は必要か? 導入目指すサンフランシスコ市職員、上がる賛否の声

Ben Margot / AP Photo

【サンフランシスコ・AP通信】 警備員のエリック・レオン氏は、ナイトスコープ(Knightscope)社製の警備ロボット「K5」が青色と白色のライトを点滅させながらショッピングモールを巡回し、買い物客の注目を集める様子を見つめる。この頑丈な自動ロボットK5は動画を記録し、警報を鳴らす機能を持つ。K5のメーカーによると、巡回させるだけで犯罪を未然に防ぐ効果があるという。

 正真正銘人間の警備員であるレオン氏は、いつか自身の職をロボットに奪われる日が来ると確信している。

「ロボットは不平を言わない」とレオン氏は言う。「ロボットは物静かだ。昼休憩もいらないし、10時きっかりに仕事を始める」。

 シリコンバレーからサンフランシスコにかけての一帯は、テクノロジー産業が盛んな地域だ。それでも警備ロボットの存在は通行人の注目を集める。しかしその地域では多種多様な最新自動化機器が活躍の場を広げており、K5はそのひとつに過ぎない。例えば機械が自動で製造した宅配ピザを食べることができる。またあるバーでは空中飛行ロボットが運んでくれたビールを飲むことができる。今年の夏にはサンフランシスコ・クロニクルがテクノロジーツアーガイドと称し、観光客がロボットと、それにより自動化された作業の実演を見ることができるスポットを10数ヶ所リストアップした記事を発表した。

 しかしサンフランシスコは一方で、労働者に対する病気休暇の付与、そして育児休暇中における給与の満額支給を初めて義務化した都市でもある。カリフォルニア州では2016年、ジェリー・ブラウン州知事が最低賃金を時給15ドル (約1,650円) と定める州法に署名したが、サンフランシスコは2014年の住民投票ですでにこの条件を採用した。そして現在、サンフランシスコのある職員が、仕事の自動化により人間を職場から追いやるロボットに対し、州規模で「税金」を課すという案を提唱している。

 しかしこの税制度の施行を判断するのは、現段階ではまだ早い。まして比較的保守的な法律の領域において、今からロボット税導入に向けた改正の必要性を論じることなどできるはずもない。激しい論争の的となっているのは、人々が自動化技術というイノベーションと、ある種の強い社会意識を両立させようとした時に生じ得る対立だ。

 今後さらに多くの職場で自動化が進むにつれ、このような対立の激化はもはや必至と思われる。市政執行官のひとりであるノーマン・イー氏は、公共の歩道は人間専用にすべきと主張し、市内の公道における食品配送ロボットの通行禁止を提案している。

「私は市民に寄り添う」とイー氏は言う。「そのため市民の利益と安全に関わることについては、用心しすぎても足りないくらいだ」。

 ロボット税導入を推進中の市政執行官ジェーン・キム氏は、アメリカの職が自動化の影響でさらに減っていくことを踏まえ、人々が生活費を稼ぐ手段を今から検討しておくことが重要だと主張する。キム氏はその問題について専門家と話し合った結果、税収増加に向けたアイデアを州議会あるいは有権者へ直接提案することを目的とした州規模キャンペーンの実施を決定した。

「自動化は収入の不平等化を招く最も大きな問題のひとつであると、深刻に受け止めている」とキム氏は言う。

 キム氏は続けて、テクノロジーを巡る混乱の渦中にある都市が、自ら責任を持ってその混乱を収めるのが筋だと述べた。

 さらにキム氏は「仕事の自動化は本質的には悪いことではない。しかし今の段階で備えを怠れば、富の集中を招き、格差の拡大に繋がる」と言う。

「本末転倒だ」というのが、警備ロボット製造会社ナイトスコープのCEOウィリアム・サンタナ・リー氏の、市政執行官らの考えに対する意見である。ナイトスコープはサンノゼのショッピングモール、ウェストフィールド・バレー・フェアを監視する警備ロボットK5を製造した。

 リー氏の話によると、民間の警備業界は高離職率、低賃金に苦しんでいる。しかしリー氏の展望では、ロボットに単純作業を任せることで、人間の警備員はロボットK5を集めたチームを統制するなど、今以上の責任を負うことになり、徐々に収入を増やすことができる。

 そのような仕事をこなすためにはトレーニングを積み、技術的なノウハウをある程度身につけておく必要があると認めた上で、しかしリー氏は、最終的に利益を得る立場にあるのは人間だと言う。リー氏の意見としては、ロボットが人間の職を奪うという考えは間違いである。

「ナイトスコープでは現在160件の業務を受注している。そして今まさに話題となっている『人間が行うある特定の仕事を失くす手段』となり得る業務として挙げられるのは、おそらく2件程度だ」。

 自動化が労働者の職を奪う日が来るのか、またはその日がどれだけ差し迫っているのかという問題が激しい論争を生んでいる。この問題はあのビル・ゲイツ氏も懸念するほど深刻だ。ゲイツ氏は今年始めに行われたインタビューで、自動化の速度を緩め、人々に準備期間を与える手段としてロボット税の導入を示唆した。マイクロソフト社の共同創業者はそれ以降、ロボット税に関し公には発言していない。

 経済協力開発機構 (OECD) が昨年発表した調査報告では、アメリカの仕事の9%、あるいは1,300万件が自動化される可能性があると算出している。しかし経済学者の間ではそこまで劇的な影響はないだろうとする意見もある。

 仕事の自動化は、そこから新たな職を生み出し、消失した分の雇用を相殺するとアナリストらは主張する。例えばロボットの構築やメンテナンス、またはロボットを動かすソフトウェアの開発といった仕事を担う労働者の需要が生まれるだろう。

 過去には別の方法でもイノベーションから雇用を創出した例がある。例えば新たなテクノロジーに関わる仕事には高度なスキルが要求されるため、一般的には高賃金が支払われる。そしてアナリストらの見解によると、テクノロジー関連のスキルを持つ労働者の賃金が上がると、その増加分が商品及びサービスに使われ、それらの消費量が増加する傾向があり、雇用の創出にも繋がるという。

「幅広い種類の仕事が次々と現れ、自動化が進む経済を支えるだろう」と言うのは、調査会社フォレスターのアナリスト、J.P. ガウンダー氏だ。「我々がこれから行おうとすることの多くは、ロボットと協力しながら行うことになるだろう」。

 ロボットに職を奪われた上に、より高度なテクノロジーのスキルを要する職には転職できないという人はどうすればいいのだろうか。

 ハワイ州議会ではロボットに仕事を奪われる可能性があるウエイターや料理人、清掃業者らの賃金を保証する手段として、ユニバーサルベーシックインカム導入案を検討する是非を問う投票が行われた。その一方、サンフランシスコの市政執行官キム氏は、ロボット税で集めた資金をもとに、在宅介護士など自動化が難しい職に就く労働者の低賃金問題を解決するという案を重視している。

 北カリフォルニア及びネバダ州北部地方の全米トラック運転手組合第7合同協議会でポリティカル・ディレクターを務めるダグ・ブロック氏によると、ホテル従業員やトラック運転手、飲食店従業員が自動化の結果大量に解雇されたという事実は今のところない。しかしその日は必ず来るとブロック氏は警告を発する。

 ブロック氏が責務のひとつとしているのが、自動化の普及により職を奪われた場合にも、組合員のドライバーが解雇手当を貰い、転職に向けた再訓練を受けられるような体制づくりだ。

「このために盤石な土台作りを進めている」とブロック氏は言う。「豪華な食事のテーブルを整えているところだ。組合員がちゃんと席につけるよう万全にしたい」。

 テクノロジー企業の側はというと、企業の製品は労働者を大いに支援するが、労働者を追いやることはないと主張する。サンノゼを拠点とするサヴィオーク社は、「リレー」と呼ばれる身長91cmのロボットを製造している。リレーは夜間に勤務する従業員が1人しかいないホテルで、ルームサービスを届ける。リレーのおかげで受付係はフロントから離れずに仕事ができると、サヴィオークの「主任ロボット訓練士」テッサ・ロウ氏は言う。

「我々はこれをロボットがタスクを引き受けていると見なしている。人間の職そのものを引き受けることになるとは思わない」とロウ氏は言う。「ホテルの廊下を歩き回り、エレベーターを待つことがひとつのタスクだとすれば、それはリレーの得意技だ」。

 同様に、スティーブ・シモニ氏、ルーク・アレン氏、グレゴリー・ジョウォルスキー氏の3人組もまた、ドリンクを運ぶロボットというアイデアを生み出した。ある夜、サンフランシスコの混雑したバーでのことだ。テーブルサービスのない店だが、ドリンクを求めて大勢の客が押し寄せていた。

「3人とももう1杯飲みたいと思っていた。こういう時には誰かが会話から抜けてカウンターに並び、10分ほど待ち、全員分のドリンクを抱えて来なくてはならない」とアレン氏は言う。

 そこで3人は「ビーボット」を制作した。ビーボットはサンフランシスコのバー、「フォルソム・ストリート・ファウンドリー」で、店内の決まったルートを行き来しドリンクを運ぶ箱型のロボットだ。スマートフォンで注文すれば、バーテンダーの作ったドリンクをビーボットが届けてくれる。この場合にもバーテンダーはチップを貰うことができる。このバーはサウス・オブ・マーケット周辺の、ちょうどキム氏が担当する地区内に位置する。

 シモニ氏が言うには、彼らの会社はまだ小さく、税金を負担できそうにない。しかし政治家がロボットと自動化の普及を見据え、将来に向けた準備を進めていることは歓迎する。

「我々の会社がロボット税の対象となるかはわからない。だがこれは重要な議論だ」とシモニ氏は言う。

 シモニ氏はいわく、ビーボットを作成した3人組は「どのような時にもイノベーションを支持する。イノベーションは世界を進化させるものだ」。

By JANIE HAR
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP

Recommends